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Dépôt de Météorites

天国を生きる

韓国ドラマ『天国の階段』再見。これが初めて観た韓国のドラマで、その後の沼のきっかけとなった。 交通事故に記憶喪失に不治の病のクサいストーリーだと言ってバカにする人たちとはお友達になりたくない。そういう舞台装置はジェットコースターに必要な落差…

緑色のカップ麺

『太陽は動かない The Eclipse』 ネットフリックスにて視聴。近年見た中で一番気に入った日本の映像作品かも。WOWOW制作のドラマはクオリティ高い。 実質的な主役はフクモトと名を変えたサクライかもしれない。エージェントをやめて自分の人生を取り戻すには…

共犯関係

ドラマ『ザ・グローリー〜輝かしき復讐〜』 Netflixにて視聴。 描かれている共犯関係に圧倒的に惹かれる。底のない泥沼と、果てのない闇の中で一人生きる——生きることを放棄して生きるという覚悟。差し伸べられた手を掴むことなく、拒みながら、それでも一歩…

永遠の浮遊感

『落下する夕方』江國香織著 同名の映画{1998年} この作品を昨年の入院中に読んだ。病棟に置いてあった数十冊のうちの一冊で、ようやく本を読める程度に回復した頃に手にしたもの。ふと思い出して、映画化されたものを観た。 華子という人物の造形がこの作品…

恋とは一人でするもの

『シンプルな情熱』アニー・エルノー著 読了。 赤裸々な内容と言われることが多いようだけど、特に驚くようなものでなく、ごく普通の女性のごく当たり前な恋の情熱の記録に、私には思えた。理性を失って熱に浮かされるさまを、殊に理性的に描くという意味で…

グレートリセットの先に

『デジタル・ファシズム』 堤未果著 読了。 マイナンバーカード作成を強要されることなど、国のデジタル化推進のやり方には嫌悪感を感じていたけれど、デジタル化というものの背後にある闇がこんなに深く濃いとは、浅学のためよく理解できていなかった。巨大…

自分を演技する

韓国ドラマ『エージェントなお仕事』 Netflixにて視聴。この頃、感想カテゴリはNetflixのドラマばかりになってしまっているな。人をダメにする配信動画。 俳優のマネージメントをする会社が舞台。マネージャーたちは、自分と会社の都合で相手に嘘をつき、騙…

愛の幻を描いたデッサン

韓国ドラマ『あなたに似た人』 Netflixにて視聴。 愛の奈落に落ちていく人々を、美化することなく残酷なまでに正確にデッサンしたような作品。とてもグロテスクに仕上がっているけれど、直視してしまう、するしかない、逃げ道のない絵画。赤と緑という補色が…

永遠の命

韓国ドラマ『還魂』 Netflixにて視聴。 魂が自分か、肉体が自分か。自分の魂が誰かの肉体に入り、誰かの魂が自分の体に入ったら、どちらが本当の自分なの? 意識は別人の体の方にあり、血や遺伝子は元の体の方に残っているわけで。 血による生体認証のシーン…

ギュッとしてくれる椅子

韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』 Netflixにて視聴。 「上から読んでも下から読んでもウ・ヨンウ。キツツキ・トマト・スイス・子猫・南…」自己紹介の際に必ずこの定型句をぶっ込んできては相手を凍りつかせる彼女は、韓国初の自閉症弁護士。あらゆる…

ドリアンのような臭気

『毒戦 BELIEVER』 2018年の韓国映画を観た。 パク・チャヌク映画の脚本家だって。たしかに、華美で過剰でグロテスクで、どこかキュビズムの絵画を思わせるようなテイストが共通している。ドライでザラリとした質感のノワールじゃなく、ジトッとした情のから…

命のための祈り

『食堂かたつむり』 小川糸 著 読了した。 食べるということは生きるということ。自分以外の命をいただくことによって、私達は生かされている。命というものの持つ価値、生きることへの讃歌。この物語は最高の食育となり、命とは何たるかを教えてくれる最高…

シュールな自虐ネタ

『ほえる犬は噛まない』ポン・ジュノ監督の長編デビュー作。ポン・ジュノ監督は初期の作品が好きかも。『殺人の追憶』もとても好みだったし、最近の、評価の高い『パラサイト〜半地下の家族』とかよりむしろ良いんじゃない? このデビュー作も、細かいエピソ…

神は支配しない

『エクス・マキナ』 アレックス・ガーランド監督。第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作品。 アンビエント調の音楽と、選りすぐられた視覚効果との影響で、だんだん意識が麻痺してくる感覚。主人公と同じく、自分が本当に人間だったかどうかが疑わしくなって…

生命のスパーク

『タイタニック』 誰もが知る言わずもがなの超大作。地上波で放映していたので観た。たしか公開後しばらくした頃に一度観たきりで、細かいところは殆ど忘れていた。 彼は彼女に言う。君は何人も子供を生んだ後、この冷たい海ではなく、温かいベッドて最期を…

日常の魔法

『八月のクリスマス』 1998年の韓国映画を観た。ハン・ソッキュ、シム・ウナ主演。 盛り場のトイレの鏡の前で、突然姿を消した彼を想い、涙を流し、鼻をかむシーンが印象的。日常のなんでもないようなシーンが降り積もり、それが次第に輝く宝石となっていく…

地下水脈を流れる輝き

『オアシス』 2002年、イ・チャンドン監督作品を観た。社会不適合者の男性と、脳性麻痺の障碍を持つ女性との、異形でありながらも純粋な恋愛。社会のタブーに果敢に切り込んでいく姿勢には、痺れる。 脳性麻痺の女性を演じた、ムン・ソリの演技が凄すぎた。…

欲望と犠牲

韓国歴史ドラマ『六龍が飛ぶ』 終了。欲望に忠実な人って魅力的。自らの欲望を、自らの意志で肯定できる人っていうのかな。持て余すほどの才覚と胆力があって、それを埋もれさせて生きることは、何より耐えられない。一人の生身の人間としての、恋慕も友情も…

過去へと向かう列車

『ペパーミント・キャンディ』 1999年のイ・チャンドン監督作品を観た。 人生に失敗した男が、思い出の場所へ帰ってくる。同窓会に現れた彼は、妙なハイテンションで騒ぎまくり、旧友たちに呆れられる。気がつけば彼はひとり陸橋に登り、線路の上で列車の到…

崖へと突っ走る列車

『人新世の「資本論」』 斎藤幸平著 読了。SDGsは大衆のアヘンである! という扇情的な見出し。それに釣られて読んでしまった。 SDGsには、本質的に、資本を崇拝する今の社会構造を変える力などなく、焼け石に水状態であり、結局は現状維持状態しかもたらさ…

真心と嘘とが分裂した人

『よく知りもしないくせに』 2008年のホン・サンス監督作品を観た。 日常のごくありふれたシーン、ごくありふれた会話の積み重ねの中に、よく知るはずの人の全く知らない顔を見つけて愕然とする。他人とは、まるっきり理解不能の、得体の知れないモンスター…

暗闇に舞う光の軌跡

『メモリーズ 追憶の剣』 2015年の韓国映画を観た。何度生まれ変わってもあなたを恨み続ける──この血の最後の一滴までもあなたを恨み続ける──それは、切なくて胸が痛くなるほどの愛の告白だった。 信じ、魂を捧げた大義を、愛のために裏切った。その贖罪は自…

核融合のような

『渇き』 2009年のパク・チャヌク監督作品を観た。気持ち悪い!どうしようもなくグロテスクだし気色悪い。もう吐きそう。なのに、何なんだろう、圧倒的な力で揺さぶられる。衝動が地核の奥深くから轟いてきて、精神を粉々に砕かれるようで。 映像のどの瞬間…

愛と欲望の境界線

韓国映画『スカーレット・レター』を観た。ハン・ソッキュ、イ・ウンジュ主演。 愛と欲望の境界線はどこにあるのか。欲望と愛はどう違うのか。そもそも、特定の誰かとの愛とは実在し得るものなのか…。欲望に身を任せる人々。誰かを狂おしく求める人々。皆が…

むごい人生を何度でも

韓国ドラマ 『梨泰院クラス』「愛の不時着」と話題の双璧を成すこの作品も観てみた。私にとっては「不時着」よりずっと素晴らしく、胸に迫る傑作だった。 復讐は、する人の人生も破滅させてしまうことが多いけれど、このドラマでは、復讐は成功への原動力で…

野蛮な時代への追憶

『殺人の追憶』 2004年、ポン・ジュノ監督作品。傑作だという評判なので以前から観たかったこの作品をようやく観た。 ろくな証拠もなく、疑わしい人間を暴力と捏造で犯人に仕立て上げる。刑事が創ったストーリーをそのまま容疑者に喋らせ自白とする。なんと…

甘口であたたかい後味

韓国ドラマ『愛の不時着』 視聴終了した。 脱北者の方が実際に監修に参加していて、北の庶民の暮らしがリアルに描かれていると評判のこの作品。流行りものにはあまり手を出さない方だけど、これは誘惑に負けて観てしまった。 ワンシーン出演した脱北者の方が…

内臓を直視する

『哭声/コクソン』 ナ・ホンジン監督作品。映像文化に於いて、韓国は世界最高峰に位置することは間違いないと確信させられる作品。でもとにかく血みどろ、目や耳を覆いたくなるような場面の連続で、精神が悲鳴をあげた。二度ほど途中で諦めようとしたけれど…

下り坂で見つけた花

『エターナル』 イ・ビョンホン主演の韓国映画を観た。 「下りるときにはよく見えた 上るときには見えなかったその花」得ようとする行為は、結果何かを失うという現実をもたらすだけ。それに気づくのは必ず、何かを失ってから。そして、究極的には、何も失っ…

幻聴

『あの人に逢えるまで』 半時間ほどの短いフィルム。南北離散家族をテーマにした韓国映画。とてもきれいで優しい映画だった。こういうのがもっと観たいのに意外とない。「シュリ」「ブラザーフッド」のカン・ジェギュ監督作品。 何十年もひとりの人を心の中…