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隕石の堆積場

主観的感想

神は支配しない

『エクス・マキナ』 アレックス・ガーランド監督。第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作品。 アンビエント調の音楽と、選りすぐられた視覚効果との影響で、だんだん意識が麻痺してくる感覚。主人公と同じく、自分が本当に人間だったかどうかが疑わしくなって…

生命のスパーク

『タイタニック』 誰もが知る言わずもがなの超大作。地上波で放映していたので観た。たしか公開後しばらくした頃に一度観たきりで、細かいところは殆ど忘れていた。 彼は彼女に言う。君は何人も子供を生んだ後、この冷たい海ではなく、温かいベッドて最期を…

日常の魔法

『八月のクリスマス』 1998年の韓国映画を観た。ハン・ソッキュ、シム・ウナ主演。 盛り場のトイレの鏡の前で、突然姿を消した彼を想い、涙を流し、鼻をかむシーンが印象的。日常のなんでもないようなシーンが降り積もり、それが次第に輝く宝石となっていく…

地下水脈を流れる輝き

『オアシス』 2002年、イ・チャンドン監督作品を観た。社会不適合者の男性と、脳性麻痺の障碍を持つ女性との、異形でありながらも純粋な恋愛。社会のタブーに果敢に切り込んでいく姿勢には、痺れる。 脳性麻痺の女性を演じた、ムン・ソリの演技が凄すぎた。…

欲望と犠牲

韓国歴史ドラマ『六龍が飛ぶ』 終了。欲望に忠実な人って魅力的。自らの欲望を、自らの意志で肯定できる人っていうのかな。持て余すほどの才覚と胆力があって、それを埋もれさせて生きることは、何より耐えられない。一人の生身の人間としての、恋慕も友情も…

過去へと向かう列車

『ペパーミント・キャンディ』 1999年のイ・チャンドン監督作品を観た。 人生に失敗した男が、思い出の場所へ帰ってくる。同窓会に現れた彼は、妙なハイテンションで騒ぎまくり、旧友たちに呆れられる。気がつけば彼はひとり陸橋に登り、線路の上で列車の到…

崖へと突っ走る列車

『人新世の「資本論」』 斎藤幸平著 読了。SDGsは大衆のアヘンである! という扇情的な見出し。それに釣られて読んでしまった。 SDGsには、本質的に、資本を崇拝する今の社会構造を変える力などなく、焼け石に水状態であり、結局は現状維持状態しかもたらさ…

真心と嘘とが分裂した人

『よく知りもしないくせに』 2008年のホン・サンス監督作品を観た。 日常のごくありふれたシーン、ごくありふれた会話の積み重ねの中に、よく知るはずの人の全く知らない顔を見つけて愕然とする。他人とは、まるっきり理解不能の、得体の知れないモンスター…

暗闇に舞う光の軌跡

『メモリーズ 追憶の剣』 2015年の韓国映画を観た。何度生まれ変わってもあなたを恨み続ける──この血の最後の一滴までもあなたを恨み続ける──それは、切なくて胸が痛くなるほどの愛の告白だった。 信じ、魂を捧げた大義を、愛のために裏切った。その贖罪は自…

核融合のような

『渇き』 2009年のパク・チャヌク監督作品を観た。気持ち悪い!どうしようもなくグロテスクだし気色悪い。もう吐きそう。なのに、何なんだろう、圧倒的な力で揺さぶられる。衝動が地核の奥深くから轟いてきて、精神を粉々に砕かれるようで。 映像のどの瞬間…

愛と欲望の境界線

韓国映画『スカーレット・レター』を観た。ハン・ソッキュ、イ・ウンジュ主演。 愛と欲望の境界線はどこにあるのか。欲望と愛はどう違うのか。そもそも、特定の誰かとの愛とは実在し得るものなのか…。欲望に身を任せる人々。誰かを狂おしく求める人々。皆が…

むごい人生を何度でも

韓国ドラマ 『梨泰院クラス』「愛の不時着」と話題の双璧を成すこの作品も観てみた。私にとっては「不時着」よりずっと素晴らしく、胸に迫る傑作だった。 復讐は、する人の人生も破滅させてしまうことが多いけれど、このドラマでは、復讐は成功への原動力で…

野蛮な時代への追憶

『殺人の追憶』 2004年、ポン・ジュノ監督作品。傑作だという評判なので以前から観たかったこの作品をようやく観た。 ろくな証拠もなく、疑わしい人間を暴力と捏造で犯人に仕立て上げる。刑事が創ったストーリーをそのまま容疑者に喋らせ自白とする。なんと…

甘口であたたかい後味

韓国ドラマ『愛の不時着』 視聴終了した。 脱北者の方が実際に監修に参加していて、北の庶民の暮らしがリアルに描かれていると評判のこの作品。流行りものにはあまり手を出さない方だけど、これは誘惑に負けて観てしまった。 ワンシーン出演した脱北者の方が…

内臓を直視する

『哭声/コクソン』 ナ・ホンジン監督作品。映像文化に於いて、韓国は世界最高峰に位置することは間違いないと確信させられる作品。でもとにかく血みどろ、目や耳を覆いたくなるような場面の連続で、精神が悲鳴をあげた。二度ほど途中で諦めようとしたけれど…

下り坂で見つけた花

『エターナル』 イ・ビョンホン主演の韓国映画を観た。 「下りるときにはよく見えた 上るときには見えなかったその花」得ようとする行為は、結果何かを失うという現実をもたらすだけ。それに気づくのは必ず、何かを失ってから。そして、究極的には、何も失っ…

幻聴

『あの人に逢えるまで』 半時間ほどの短いフィルム。南北離散家族をテーマにした韓国映画。とてもきれいで優しい映画だった。こういうのがもっと観たいのに意外とない。「シュリ」「ブラザーフッド」のカン・ジェギュ監督作品。 何十年もひとりの人を心の中…

虚像

『ルウベンスの偽画』 堀辰雄先日読んだ「風立ちぬ」が琴線に触れたので、こちらも読んでみた。 意中の人を本当に愛しているのか、自分の観念の理想像をそこへ投影しているだけなのか。その迷いは必ず恋というものに付随するのではないかと思う。観念の中の…

幸福という痛み

『風立ちぬ』 堀辰雄 読了した。遠い昔に読んだような読まなかったような。殆ど覚えていないので初読と言ってよかった。 この作品は、生と死の意味を問う作品とされているようだけれど、それ以上に、私にはこれは恋愛の小説、しかもある意味で一方通行の愛を…

美男と醜女

『亡き王女のためのパヴァーヌ』 パク・ミンギュ著 読了した。 かつて私が接したことのあるあらゆる作品で、人間の容貌の「美醜」という価値観は深く掘り下げられることなく、美しい女性というものは美しさという一点において、単純に価値があるものとされて…

記憶という幻影

『殺人者の記憶法 新しい記憶』 ソル・ギョング主演、2017年の韓国映画を観た。 一筋縄ではいかない、センセーショナルな内容。「殺人者の記憶法」と「殺人者の記憶法 新しい記憶」という編集違いの二種類の作品があり、前者は一般向け、後者はコアな映画好…

星へ梯子をかける

『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド著 村上春樹訳 読了した。まだ十代の頃、古典的な名作と言われるものは片っ端から読んでみようとしていたその頃読んだ中の一冊に、この小説もあった。翻訳文学ならではの、回りくどいような何とも言え…

無償の愛の形

『母なる証明』 2009年、ポン・ジュノ監督作品を観た。「グエムル」は、私にはあまり良さが理解できなかったので、この監督さんは苦手かも……と思い込んでいた部分があったけれど、それは巨大な間違いだった。 映像における文体のようなものが全面に出てきて…

ときめきを冷凍保存したい

『隠された時間』 2016年の韓国映画を観た。カン・ドンウォン主演。ただのファンタジーでは終わらない、心を鷲掴みにされるような甘美な映画だった。下手な恋愛映画よりずっと心に滲み、胸が震えた。初恋の人が時を経て、もっと素敵になって突然迎えに来てく…

社会の奴隷から脱皮する

『コンビニ人間』 村田沙耶香著 読了した。 この登場人物を見て、ちょっと変わったおかしな人、普通じゃないけど面白い人、と思うなら、その人はこの社会を上手に泳ぎ、疑問を持たず、不自由することなく生活できている人なのだろうと思う。私はこの主人公を…

本物のユートピア

『ギヴァー 記憶を注ぐ者』 2014年の映画を観た。メリル・ストリープ ジェフ・ブリッジス出演。 ディストピアに住む人は、そこがユートピアだと信じている。だからその世界はディストピアであり続けることができるのかな、と感じた。過度に統制され管理され…

ぺしゃんこになった顔の愛おしさ

『カステラ』 パク・ミンギュ著 読了した。誰にも似ていない、唯一無二の個性的な文章だなと思った。とてもポップでシュールで、リズムのある文体。圧倒的と言えるほど独特の世界観が確立されているところは村上春樹っぽいかなとも思ったけど、またちょっと…

集団のなかの無感覚

『少年が来る』 ハン・ガン著 読了した。 この作家さんの作品は、『菜食主義者』『すべての、白いものたちの』に続き三作目。詩的で静謐さを湛えた文章と、軍事政権下の弾圧という内容は全くマッチしないような気がしていて、読む前にはどんな内容になってい…

多くを与えられすぎた罰

『バベル』 2006年の映画を観た。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。 バベルの塔が崩れて、言葉が通じなくなった。現代人も天まで届く塔を建てようとした。言葉は既にバラバラでこれ以上奪えない。それでは今度は何を奪われるのか。当たり前…

最も美しい愛の在り処

『愛、アムール』 2012年、ミヒャエル・ハネケ監督作品を観た。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。あまりに重く、消化しきれずにところどころ休みながら、時間をかけて鑑賞した。 知的で穏やかな老紳士が、壮絶な介護によって、少しずつ、少しずつ追…

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