朝起きると、リビングのエアコンが作動したままだった。おかしいなと思ってリモコンを探し、スイッチを切るけれど反応がない。リモコンの表示面が誤作動して数字の8が並んでいる。部屋の片隅を見上げると、エアコンのカバーが外れ、片側が引っかかって斜め…
ノートを広げて、漢字のドリルみたいな問題を解いている。「椎間板」という問題があり、椎間…まで書いて、次が版だか盤だか板だか一瞬わからずにペンを止めた。そこへ父がやってきて、ふんと鼻で笑い、そんな問題もわからないで将来何になるつもりだ、よもや…
大切にしている水晶玉がある。手のひらに収まるくらいの大きさで、ほぼ透明なクリスタルだけれど、ところどころ黄色い水玉模様のようになっていて、シトリンが混じっているようだなと思った。内部には白く濁ったインクルージョンがたくさんあり、不透明な部…
真っ暗な闇の中に立ち尽くしている。重く、粘り気のある闇だった。自宅の前の道路にいるようだ。ようやく闇の中にぼんやりと見慣れた壁と窓、屋根を見上げることができた。私はこの世界に存在することを心底嫌がっている。もう嫌だ、どこか別の世界へ旅立ち…
すでに卒業したはずの高校に、また通っている。カレンダーを見ると11月で、まだ卒業には少しある。あと何日我慢すればここから自由になるだろうかと、数えることだけが生きがいとなっている。この状態を、終わりにできるのだと突然気づく。 この現実は自分…
大学の建物の中、エレベーターに乗り込んだ。私は友人Aと一緒だった。他愛もないお喋りをしながら、混み合ったエレベーターに乗り込むと、重量オーバー寸前だった。すでに乗っていた学生たちの中に、見知った顔を見つける。元アイドルグループのKに似たそ…
新しいドラマを見始めようと思っていたら、ちょうどそのドラマの宣伝番組をやっていた。主演の俳優Jが、同年代の若い脇役たちを四人従えて、その中心に立って挨拶していた。 Jはその役柄に関して熱く語り、そこから人生論や哲学的な内容にまで発展していっ…
専門学校のようなところに通いはじめ、初日に緊張しながら学校へ向かう。渋谷と恵比寿の間に学校はあるはずだった。初めて通る大きな交差点を抜け、太い歩道を行き交う人々の中に紛れる。学校の建物の中、大きなトイレのような場所にいる。プールの更衣室の…
玄関のドアを開けると、見慣れない三人組が立っていた。二十歳くらいの若い男性二人と女性一人。彼らは皆、ちょっと不思議な格好をしていた。薄汚い感じの古着を重ね着し、穴の空いたジーンズをはき、顎くらいまでの長さのドレッドヘア風の髪型、そして首に…
夢の中の私には密かに片想いをしている人がいて、彼が離婚したという週刊誌の記事を、新聞の中に見つける。朝早く、一通り新聞には目を通したはずなのに、その時には見つけられなかった。なぜ見逃したのか、不思議だと思った。 ずいぶん前に注文した洋服が到…
両脚を揃えてみると、左脚の方がかなり長かった。いつからこんなに脚の長さに差ができてしまったのだろう。歩くと体が安定せずガタピシして、うまく歩けないので、病院に行った。 対応した医師は、かかりつけの歯科医によく似ていた。その医師はいつものよう…
野草を食することの素晴らしさを語っているテレビ番組を見て、試しに食べてみるかと思い立ち、庭に出た。家の庭は現実のものより広く、畑のようだったけれど、畑のような秩序がなく、あちこちに不規則に何かが植えられている。モグラ叩きの穴みたいだ。その…
家でテレビを見ている。画面にはライブイベントのような映像が映っていた。母がやってくる。私はその映像を見ていることがとても恥ずかしくなる。 私はそのライブ会場にいる。次々とアーティストが壇上に現れては去っていく。たくさんの出演者の中で、ついに…
有名な悪魔のD閣下が、教室を見回した。数十人が着席する中、私に視線をとどめて溜息をついた。こいつは駄目だ、子猫のように飼ってやるしか無いな、と彼は言う。出来が悪すぎて匙を投げられているのか、大切に思われているのか、どちらか全くわからない。…
東大野球部に入り、そこで活躍して注目を集めプロ入りするという青写真を描き、実際そのとおりにプロ選手となった人物の伝記的な映画を観る。主演はなぜか韓国人俳優のK。 普通なら強豪校に入ってそこで鍛えられることでプロを目指そうとするだろうに、Kは…
月が雫をこぼしてる! あれは月の涙かな? あっ、いま月が裏返ったよ!私は誰かと手をつないで歩きながら、ずっと夜空を見上げつづけている。月が私たちを観客に手品でも披露しているかのようで、一瞬も見逃せない。いつもと同じように黄色いその色が、何か…
ラグビーボールくらいの大きなハンバーグステーキを食べる。ランチのセットを注文すると、その巨大ハンバーグ、ライスとサラダの小鉢がが出てきた。周りの人たちも当然のようにそれを平らげている。そんなものなんだと思って、私もそれを食べる。食べきれな…
私たちはバスツアーのようなものに参加していた。ツアーというよりも、もっと大きな意味での旅、民族が大移動するような旅だった。ある小さな町で停まり、古びた風情のある町並みに、土産物店が幾つも並ぶなかを歩き回る。周囲の人々はすべて同じ移動に参加…
私は数学の教師だった。教師なのに、生徒のように教室で着席して、授業を受けている。数学をどう指導するかという授業らしい。私は、高校生なら皆学んだはずの簡単な問題に四苦八苦する。もう卒業してだいぶ経つから、忘れてますよね?忘れてませんか? と周…
ゴッドファーザーみたいな映画を見ている。あるいは本当にその世界を生きている。どちらかわからない。私はマフィアのような悪い組織の、ボスの三男だった。長男は、勢いばかりで実の伴わない、思慮に欠ける人物。次男は、臆病で無責任。三男の私は、一見善…
部屋に入ろうとすると、ドアノブが無くなっている。ノブが嵌っていたはずの穴は、茶色い紙製のガムテープで塞がれていた。ガムテープはドアと壁を密封するように何重にも貼られていて、そのしつこいやり方から、父の仕業だとすぐに分かる。 何故こんなことを…
髪をヘアウォーターで少し濡らして、ブラシをかけている。後頭部のやや左のあたり、髪の感触がぬるっとして、べたっとして、束感がある。なんだろうと思ってよく触ってみると、その部分だけ、髪の毛ではなくえのき茸が生えていた。ロングの髪に混じって違和…
真っ白で平たい皿が、欠けているのに気づく。装飾を削ぎ落としたシンプルな皿のエッジには、三センチほどの欠けた部分があり、傷口は刃先のように鋭利だった。皿に感情があるとすれば、たしかにそれは、憤りが限界を超えたために出来た噴火口のようだった。 …
私がその譜面を食い入るように見ていたためか、先生は譜面を貸してくれた。それはギターのための譜面のようであり、ピアノの楽譜のようでもあり、そのどちらでもなかった。どうやって読み解いていいかわからない、謎の記号と濃密に絡まりあった私は、不思議…
彼が前方から歩いてきて、私は顔を上げられない。前髪が乱れているだろうことが気になっていた。彼は、私のすぐ前で立ち止まった。私は自分の机が邪魔しているのだと思って、いや、思ったふりをして、机を少し脇へとずらし、通路を広げてあげる。彼はなにか…
巨きな帆立貝のような二枚貝があり、私はその頑なに閉ざされた口をこじ開けようとした。ボッティチェッリの絵画でヴィーナスが乗っているみたいな貝。その中には、裸の男性が、胎児のように丸くなって入っている。何故だかそのことをあらかじめ知っていた。…
かつてのスペイン風邪という名称のように、今回の〇〇風邪の名称のもととなった〇〇島はどの位置にあるでしょうか。三択でお答えください。緯度30度、緯度55度、緯度65度。正解は緯度65度。その島は南アメリカ大陸の南端に、おまけのようにくっつく…
憶えているいちばん古い夢はなんだろうと考えてみると、小学三年のときに見た、血尿が出る夢に思い当たる。いつものように用を足すと、白い便器の中が真っ赤に染まっている。その赤い色があまりにも濃度が高く鮮やかで、見つめているとそのなかに眩暈ととも…
ベッドに横たわり、彼に背を向けて、泣いていた。泣くというよりも、何かが溢れてしまい吐き出すしかない。嗚咽というよりも、魂が作動する機械音のようで、自分でも見知らぬ、どこか生命とは遠い場所で歯車が軋むような音だった。彼が戸惑っているのはわか…
朝七時過ぎに起きなければならない。でも起きられない。七時半くらいから放映されるドラマがあり、俳優Cが主演している。私はそれを見たかった。起きなければと思っているうち数十分眠ってしまい、気づくと八時過ぎだった。重い体を引き摺って起き出す。ド…