SITE MÉTÉORIQUE

Dépôt de Météorites

茶番劇の達人たち

多くの人はサプライズが大好きで、フラッシュモブのようなゲリラパフォーマンスまで流行したりする。バラの花弁を敷き詰めて蝋燭灯してプロポーズだとか、そこまで小っ恥ずかしいことでなくても、レストランで誕生日の人がいると明かりを消してケーキの蝋燭…

推しを消費する

「推し活」という言い方がどうにも嫌いで仕方ない。婚活・ポイ活・コスパ・タイパなどと同じ穴の狢感。推すという活動で自分に何の利をもたらすかが最重要な価値であることを物語っているような気がする。推し活してる自分がキラキラ充実してて大好きなの感…

夢遊病シェルター

私が一人で歩いている様子を見た友達に、夢遊病のようだとよく言われた。ぼんやりとして心ここに在らずといった風に見えるようだ。確かに、外出先でも一人の時は外界との接続スイッチを切っている。スイッチを切ると、他の人は世界にいないと同然になり、外…

毒入りの櫛

同じ本をひたすら繰り返し読む子供だった。何度も何度も同じ本の同じ箇所ばかり繰り返していた。その箇所には何らかの形で癒やしが詰まっていた。スイッチを押すと同じ音が鳴り、その音にうっとりとする。ベルを鳴らすとご飯が出てくると知っている猫みたい…

引きこもり絶対ジャスティス

引きこもってしまう人には何らかの心の病が隠されているのだろうと思う。診断を受けに病院に行くことでさえできない状態だったということ。あるいは医療に対して否定的な捉え方をしている、またはせざるを得なくなったということ。病名を得たからと言ってな…

不自由に生きる自由

高級マンションに住んでるとか、ハイスペックの旦那さんや恋人がいるとか、いい車に乗ってるとか、たくさん海外旅行するとか、そういう人と自分を比較して勝手に卑屈になったり嫉妬したりするのは、それらに「価値がある」という思い込み以外の何物でもない…

共感への復讐心

自分の書いてきた文章も、他の人から見たら価値を感じてもらえない、読む気にならないつまらないものかもしれないけれど、私自身にとってはとても大切なものだし、価値のあるものだということは間違いがない。理解されなくても構わない。それは「わたしの世…

つまらないものを愛する

つまらない映画を見たあと、金と時間を返せ〜!とか言ってる人を見て、確かにそうだな、無駄だったよな…と思っていた。自分自身も若い頃、つまらないものを見せられて非常に不快という気分に、よくなっていた。つまらない会話にうんざりだと感じたり。(それ…

感情的時差ボケ

思いもよらなかった事が起こると混乱して何も言えなくなるという件で、中学の時のことをひとつ、よく覚えている。 私は診断で引っかかって医療施設に詳しい検査を受けに行くことになり、その日は早引きした。検査がどれくらいかかるか分からなかったので、早…

無神経な人

精力のすべてを傾けて、普通の人の普通の言動を模倣することに努めていた子供時代。些細ないじめにあった体験があり、深刻なものではないけれど、周囲に無視されたり酷い言葉が書かれた紙が下駄箱に入っていたりした。何でも思ったことをズバズバ言っちゃう…

良くしようとしない

やはり症状が再燃して、レクサプロ服薬を再開することになった。早く薬から離れたい、病院通いから開放されたいという気持ちが焦りを生んでいたかもしれない。はやくはやくと欲張りすぎて、断薬を早くしすぎたのかも。未来に希望を持って今を生きる、という…

暴露療法

神さまは怖い親であるかのように思っていた。なにかが起こるたび、これは神さまが私に与えている治療の機会で、私がそれを克服できるように、逃げ続けていることに直面させようとしているんだと勝手に解釈した。また首根っこを捕まえられ、見たくないものに…

願うことが何もない

金木犀の木を植えたかった。秋風吹くころにどこからともなく香ってくるのが好きで、家の庭にも一本欲しいと言った。父は、庭を管理しているのは自分だから面倒になることは望まない、どうしてもと言うなら鉢植えで管理できるものにしろと言った。言う通りに…

雑草と戯れる

雑草に特別な定義はなく、人間にとってそこに生えていて欲しくないものを単に雑草と呼ぶのだとか。コンクリートの割れ目から生えてきたど根性大根も、雑草といえば雑草になるんだな。ほんとうに僅かなひび割れでもあればコンクリートの隙間からどんどん生え…

変な声

自分の声がスピーカーから聞こえてきて、それが自分で認識している自分の声と全く違う声で、しかも外国人のような訛りがあって愕然とする──という夢を見た。 幼い頃、録音された声を聞いて、自分のじゃないみたい、変な声、とは思った。でもそれだけだった。…

愛の痛み

不倫に走った有名人など袋叩きにしたがる人達は、自分の配偶者や彼氏彼女が浮気をしたら激高するんだろうと思う。無条件で、浮気するほうが悪い、たぶらかした相手が悪い、だから自分は怒り狂う権利がある。 本当に相手が大切な存在なのだったら、怒るより前…

無為徒食

フーテンの寅さんとか、遊び人の金さんとか、無為徒食の「雪国」の主人公とか、昔はまともな職がなくフラフラしている人間にも市民権があった気がする。むしろ一種のカッコ良さ、肯定的な認識も少なからずあったような気がする。敢えて倫理を外れ、正しくな…

克服してはいけない

心の不具合は克服しなければいけないものなの? 例えば、恐怖症によってもたらされる困難と、それを克服するための努力が呼び込む苦痛とを天秤にかけて、後者のほうが上回るとしたら? 治さなければいけないと努力することが、どれほど苦しいことかを体験し…

クリエイター

決算書などの無味乾燥な砂を噛むような文面。精製を繰り返して微量栄養素がすべて取り除かれてしまったような味わい。規格に合わせた中にさらなる規格があり、そのまた中に規格がある。そういうのにうんざりすると、芳しい香りや圧倒的な手触りを持つ「美し…

トレードオフ

父は克己という言葉が大好きで、自分に厳しく、一度決めたことは曲げずに続けることを良しとしていた。良しとする程度ではなく、それに執着し依存していた。自分を律し、怠けようとする心と戦って勝ち、何が何でも始めたことは投げ出さない──そこだけを切り…

悪筆

パリの北駅の近く、友達と二人疲れ果てて小さなレストランに入った。夜遅かったし適当に食事を済ませたかったので、どこでもいいから目についた店に入ることにした。無愛想な店員さんが持ってきたメニューはすべて手書き文字で、いかにもフランス人らしくも…

トマトに砂糖をかける

我が家では、トマトに砂糖をかけて食べるのが定番だった。父と祖母が極端な甘党で、何にでも砂糖をかける傾向があった。いちごに砂糖と練乳はよくあることかもしれないけれど、グレープフルーツにもこんもりと砂糖を山のように乗せていたものだった。 そんな…

アナログという贅沢

紙を切って封筒を作り、書類に手書きで書き込んで印鑑を押して、糊で封をして、切手を貼る。そんな作業が久しぶりで、なんだかとても楽しかった。そんな事務的作業は非効率で前時代的だと嫌われる。会社組織で莫大な事務仕事があるなら、まあそれもわからな…

不倫と契約

人が不倫していることなんて、なんの興味も関心もない。その人の人生でその人の勝手だと思う。世の中はなぜ他人の不倫に大騒ぎするのか分からない。結婚なんて紙切れ一枚で決定するただの社会制度。そこに必ず愛があるわけでも絆があるわけでもない。それが…

男らしさ女らしさ

男らしさ・女らしさという言葉を使うだけで、ジェンダー意識が古いと言われてしまうのは、どうなんだろう?男らしくない男性がいてもいいし、女らしくない女性がいてもいい。それは個人の領域で、どんな個性を持っていても否定されてはいけないと思うけど、…

ささやかな復讐

私はとても嘘つきな子供だった。都合の良い嘘を吐くと、辻褄を合わせるために更なる嘘が必要になるけれど、絡まりあった幾つもの嘘を上手に捌いて破綻しないようにすることが大抵の場合できた。そのためにいつも気持ちは張り詰めていた。それでも自分にとっ…

ねこ禁断症状

長く駐車場だった隣の空き地に昨年新築のお家が建ち、新しい方が引っ越してきた。表札のところに猫の飛び出しに注意というステッカーがあったので、猫を飼っているんだなと思っていたら、以前一度だけ、うちの庭から見える北側の小窓に猫がちょこんと座って…

未来の記憶

幼い頃に、母の職場に連れられて行ったことがあった。母は中学の教師だったので、あれは休みの日の夕方だったと記憶しているのだけれど、ガランとした人の少ない校舎の中で中学生の女の子たちが数人寄ってきて、五歳くらいの私を見て可愛いー!と騒いでいた…

名前という仮面

私の名前の漢字には、父の名前と同じ字が一字入っていて、安易に父と同じ漢字を使ったことがずっと気に食わなかった。名前の音としての響きは気に入っている。けれど文字の視覚的な印象がどうしても嫌で、通称として他の字を使おうかと考えたりしたこともあ…

父のなかの少年

父は多分、強迫性障害を患っていたのではないかという気がする。もちろん本人に病識はなかったし、それに苦しんでいる様子でもなかったけれど、行動はまさに強迫的だった。 戸締まりをしたら何度も確認を繰り返すのが常で、指差し確認を大げさにするのが日課…