SITE MÉTÉORIQUE

Dépôt de Météorites

猫になりたい

長く駐車場だった隣の空き地に昨年新築のお家が建ち、新しい方が引っ越してきた。表札のところに猫の飛び出しに注意というステッカーがあったので、猫を飼っているんだなと思っていたら、以前一度だけ、うちの庭から見える北側の小窓に猫がちょこんと座って…

未来の記憶

幼い頃に、母の職場に連れられて行ったことがあった。母は中学の教師だったので、あれは休みの日の夕方だったと記憶しているのだけれど、ガランとした人の少ない校舎の中で中学生の女の子たちが数人寄ってきて、五歳くらいの私を見て可愛いー!と騒いでいた…

一番身近な麻薬

同性婚とか事実婚とかを擁護する人たちと嫌悪する人たちさあ議論しましょう難しく考えすぎてない?権利を認めて欲しい人と認めたくない人認めたくないと言っている側に問題があるだけなのでは? 認めるなと言っている人たちはすべて当事者ではないから当事者…

外出着

誰かに話したことが自分の意図したとおりに伝わらないそういう経験がとても多かった単に話し言葉が下手なのか相手に合わせて語り方を調節することが本当に苦手だからか 完全に相手の都合のいいように曲解されることもあるそれでいて「わかる〜!」と同意され…

名前という仮面

私の名前の漢字には、父の名前と同じ字が一字入っていて、安易に父と同じ漢字を使ったことがずっと気に食わなかった。名前の音としての響きは気に入っている。けれど文字の視覚的な印象がどうしても嫌で、通称として他の字を使おうかと考えたりしたこともあ…

父のなかの少年

父は多分、強迫性障害を患っていたのではないかという気がする。もちろん本人に病識はなかったし、それに苦しんでいる様子でもなかったけれど、行動はまさに強迫的だった。 戸締まりをしたら何度も確認を繰り返すのが常で、指差し確認を大げさにするのが日課…

悲しみが愛おしい

ダイオプテーズのジュエリーをたまたまネットで目にした。ダイオプテーズは原石しか持っていないし、ジュエリーに加工されたものは見たこともなかったので目を奪われた。 深い青みがかったグリーンに魂が吸い込まれていくように感じられる。悲しいときに、陽…

永遠の浮遊感

『落下する夕方』江國香織著 同名の映画{1998年} この作品を昨年の入院中に読んだ。病棟に置いてあった数十冊のうちの一冊で、ようやく本を読める程度に回復した頃に手にしたもの。ふと思い出して、映画化されたものを観た。 華子という人物の造形がこの作品…

自分に恋をする

自分を男と女に分裂させる男性の自分を 女性の自分が励まし慈しんであげる女性の自分を 男性の自分が守り包んであげる自分にとっての女神は自分の半身であり自分にとっての守護神は自分の半身であり守り守られ愛し愛され自分のなかの異性に恋をする想いが円…

魂の鎮痛剤

モルダヴァイトというのは隕石の一種で、モルダウ地方から産出されることでその名がついたとか。モスグリーン系の色調を持つ透明なガラス質の石。これに初めて触れた時、自分でも不思議で仕方ないくらいに「懐かしい」と感じた。 魂の繋がりを持つと思われる…

陽性転移

心の病で医者にかかると、その医師が異性だった場合、かなりの率で転移という状況が起こるらしい。医師に恋愛感情のようなものを持ってしまうこと。それが治療の助けにもなるし阻害する場合もあるよう。私にも転移らしい症状は起きた。マスクをした顔しか見…

責任感という害悪

自分が病気であると思えないことが結局何よりも辛かったのかもしれないこんなのは病気ではなくただの言い訳だただの甘えだ ただの逃げ口上だきちんと通院もしていないくせに都合が良いから具合の悪いふりをしているんだそういう声ばかりが心に響いていてそれ…

生産性のない人間

人間は食べてはうんちをして馬鹿みたいだな食べては歯を磨いて食べてをお皿を洗い汚しては掃除をし汗をかいてはお風呂に入り 毎日毎日その繰り返しに次ぐ繰り返し考えてみると馬鹿みたいだなそれが生きるということ馬鹿みたいな繰り返し大層な意味なんてない…

ノイズ

暗闇の中を走る車の後部座席で、流れている音楽に耳を傾けるが、大音量であるがゆえに快適でない。運転席には、歳が離れているせいかあまり親しく話したことのない従兄。音楽は大音量なのに、何の曲なのかどのようなメロディーなのかが全く感じ取れない。辛…

自他の境界を保つ

身近な人の痛みや苦しみに同化して一緒に苦しむのが美徳のように思えてしまう一緒に苦しんで痛みを分け合えばそれが軽くなるかのようにその人が楽になれるのではあれば痛みを代わって引き受けてあげたいと思う 境界線をはっきりと持たなければいけない私はそ…

恋とは一人でするもの

『シンプルな情熱』アニー・エルノー著 読了。 赤裸々な内容と言われることが多いようだけど、特に驚くようなものでなく、ごく普通の女性のごく当たり前な恋の情熱の記録に、私には思えた。理性を失って熱に浮かされるさまを、殊に理性的に描くという意味で…

石読みのレッスン

かつてピアノを習っていたT先生のお宅。様々な天然石が飾られ、先生自身も大振りのネックレスをしている。くすんだ淡い緑の石と、茶色でもえんじでも紫でもない分類を拒むような曖昧な色の石とが、交互に並んでいるネックレス。その高潔な曖昧さを持つ石に…

与えてあげるという行為

熱心な宗教信者の従姉と揉め事があった件。従姉から謝罪の電話があり、なんとか円満に解決はした。 その際に話したことで、認識の相違というのはこんなに深く誤解を招くのかと思うことがあり、考えさせられた。 結局我が家の申し出の通りに、従姉の借金はな…

デコレーション弁当

可愛い動物やキャラクターを象ったお弁当。タコさんウィンナーくらいならいいけど、最近のは手が込み過ぎていて、妙にリアル。それを食べちゃうのって、残酷じゃないの?──そんな事を言ったら、空気読めよ?って睨まれるだけだろうか。 見た目が映えることば…

鍋のなかの子犬

コーンポタージュのような、淡いクリーム色の液体を鍋に入れ、火を着ける。ゆっくりと温められていく過程に、私は鍋から離れ、部屋の中にいるはずの三匹の犬を探す。二匹は元気に戯れていた。もう一匹の、家に来たばかりの子犬が見当たらない。私は鍋へと戻…

広告という洗脳

アルゴリズムによって勝手に並び替えられて、見知ったようなものばかりが集まり、新鮮な驚きを奪われる。今までと同じ視点ばかりで息苦しくなる。逆に言えば、自分を脅かされるような反対意見がないので楽ちん。 自分を逆から眺めてみると死角に気づく。その…

無のつく言葉

有意義に時間を使いなさい──生産性という言葉にどこか似ている。追い詰められる気分。意義があるかないか判断するのは、狭い視野のちっちゃな脳味噌。無意味 無意識 無常無頓着 無鉄砲 無計画無為 無軌道 無害無期限 無垢 無作為無我 無心 無言 無がつく言葉…

グレートリセットの先に

『デジタル・ファシズム』 堤未果著 読了。 マイナンバーカード作成を強要されることなど、国のデジタル化推進のやり方には嫌悪感を感じていたけれど、デジタル化というものの背後にある闇がこんなに深く濃いとは、浅学のためよく理解できていなかった。巨大…

不安に備えるということ

自分でどうすることも出来ない天災や社会状況などに対して、私はあまり不安を感じない。将来年金がもらえるどうかとか、自分が直接働きかけることのできない事象に対して不安になっても所詮何も出来ないのだから、無駄な心労だなと割り切ることができる。 そ…

書くことは祈ること

思考や感情をを言語化することで、客観的に認識できるとよく言われる。でも私、客観化したくて書いているわけじゃないな。心のなかで渦巻いたままの思いを書き出すことで、自分のテリトリーの外側に出し、人の目に触れる状態にして宇宙へ投げ出すことで、「…

地図無しのクエスト

鬱で入院する前、自分でもメンタルが不安定になってきているのを強く感じていたため、マインドフルネスや森田療法等の本をもう一度読み漁り、どうにかして精神を安定させたいと必死になっていた。結果として、そうやって足掻いてしまうことで心がもっと消耗…

氷の結晶の瞑想

澄み切った冬の朝焼けの下凍りつく空気を胸いっぱいに吸い込むダイヤモンドダストのようなきらきらと美しい結晶が体の中に流れ込んでくる深く息を吐くと結晶は体内で温められほんの少し溶けた形でさらに光を強く反射してきらめく細やかな結晶は息の流れに乗…

その代わり

まだ小学校に上る前の幼かった頃、近所の友だちと一緒に遊んでいて、何をして遊ぶかで意見が一致しなくなることがあると、隣のAちゃんがよく「その遊びもするけど、その代わり私のしたい遊びもしよう」と提案してきた。交換条件で取引してくる。これが私は…

宗教のない世界

私は自分自身に対して、あるいは亡き父親に対して腹を立てたことは数え切れないほどあるけれど、他の人に対してはあまり怒りを感じたことがない方だと思う。でも、まさに怒り心頭に発するという出来事が先日あった。 父の方は自分の家とほとんど縁を切ってい…

友達の真似

幼い頃、学校に上がって大勢の同年代の子供たちの中に放り込まれて、どう接していったらいいか全く解らなかった私は、とにかく人のやっていることを観察し、分析して、このような場面ではこういう言動を取るものだということを一から学んでいった。多数の平…