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モナリザと2つの時計

エナジーヒーリングのようなものを受けに行く。セラピストは髪のとても長い50代くらいの女性で、モナリザのように微笑み、スリムな体つきをしている。ベッドに横になるように指示される。そのベッドは自宅でいつも寝ているものと同じで、枕や布団まで全く同じだ。

私は横になるとすぐ、胎児のように体を丸めて目を閉じる。セラピストは幼子を寝かしつけるように、私の横に添い寝する形で横になった。そこで子守唄のように聞かされたレクチャーは「セルフラブ」がいかに大切かという内容。


うつらうつらしながらその声を聞いているものの、頭の中の思考はいつのまにか全く別のことへと流れ出し、雑念にまみれる。

せっかくこうして都心まで出てきたのだから、帰りに銀座かどこかで普段よりちょっと高級な服でも買って帰ろうか。いつも安物ばかり買っていて、もう少しマシな服を持っていないと。今自分の着ている服を意識する。こんな部屋着のような格好で街に出るのは恥ずかしいかな。


セラピーが終了し、起き上がると、着ていた白いシャツが思った以上にしわくちゃになっている。スウェット生地のネイビーのワイドパンツも、白い繊維くずが沢山ついていて、これでは恥ずかしくて出歩けたものではない。すぐに家に帰ろうと決意する。


階段を降りると、そこは自宅の一階だった。リビングに行き、今何時だろうと時計を見る。壁掛け時計の前に、何やら新聞紙をくちゃくちゃに丸めて固めたような不思議な物体が浮いていて、それが邪魔して時計の針が見えない。物体と言うより、その部分だけ何もない、プラックホールのような「無」と言ったほうが正しいかもしれない。

私は背伸びをし荒々しい動作で、その得体の知れない灰色の闇を引きずり下ろす。ようやく時計が見えた。午前11時37分。まだお昼前だった? 体感としてはもっと時間が経っていた感じがしたのに。

訝しく思い、部屋の反対端にあるもう一つの壁掛け時計を見た。午後2時20分を指していた。やっぱり。さっきの時計は電池が消耗していたのか、若しくはあの灰色の闇がなにか悪さをしたのだろうか? と考える。