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隕石の堆積場

戦闘機に狙われる淡緑色のクッション

寒空の下を家へと急ぐ。ねずみ色の曇天を、落葉樹の細枝が必死に支えているようだ。いつもの道を歩いているのに見慣れない広場に出た。広場というより、取り残されて何の使い道もない徒広い空間に、誰からも相手にされない雑草たちが行き場をなくして集っているようだった。
閑散とした広場の奥から歓声が聞こえ、何事だろうと近寄ってみる。何十人かの人々が空を見上げているのが目に入った。すると突然、空軍の戦闘機のような飛行物体が彼らを目掛けて急降下して、地面すれすれでまた上空へと翻っていった。こんなところで航空ショー? ありえない、と思いながらも横目でその様子を見ながら歩いた。乾いた冬の風が頬を刺す。


彼らは一様に、淡い緑色のクッションを胸に抱いている。シルクのようなつるつるした生地に覆われた、やや小さめの四角いクッション。どうやらそれを持って立っていることで、飛行物体に狙われるらしい。そして彼らは、狙われることを望んでいる。それが名誉なことらしい。
気づくと、私も同じようなクッションを持っていた。薄萌葱色の色合いが美しいものだった。飛行物体が私を目掛けて急降下してきた。やはりぶつかる寸前で空へと昇っていった。


見物人のうち数人が私に寄ってきて、話しかけてきた。狙われた私が羨ましいらしい。関西弁でしつこく話してくる男性が一人いて、お笑い芸人のHによく似ている。彼の持っているクッションは、私のものより緑色が濃くて、素材も麻のようにざらついていて、細かい色むらがあった。もしかして彼はクッションを交換したいのだろうか? と思ったけれど具体的に依頼されたわけでもないので、私は黙っていた。


芸人Hは誰かと口論を始めた。相手は、Hの相方のMによく似ている。やがて口論は、ウェブ上でのけなし合いに発展した。沢山けなすこと、見事に論破して相手をねじ伏せることで、それが勲章のようになり飛行物体に狙われやすくなるらしい。そのコンビは互いにそっぽを向きながら雑草の間に立ち尽くし、夢中でスマホを握りしめていた。

 

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