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記憶は愛より悲しいもの

『傷だらけのふたり』 2013年の韓国映画を観た。
本当に泣ける映画というのはこういう映画のことを言うのだろう。ベタな展開だなと思いながら観て、それなのに最後は見事に泣かされてしまった。主演のファン・ジョンミンが素晴らしかった。
お涙頂戴で、さあココ泣くところですよ!と押し付けてくる映画は大嫌いだけど、この映画にそういう傲慢さは欠片もない。


人には当然いろいろな側面があって、それを少しずつ知りゆく過程で、好きになったり嫌いになったり。見えている部分と、隠されている部分と、その間の沢山の思い込みや誤解や。その人間の複雑さの全貌が綺麗に整えられた形で見えてくるのは、その人がいなくなってからなのかもしれない。「記憶とは愛より悲しいもの」というラストに流れる歌の歌詞にもあったように。


喧嘩を繰り返し、いがみ合い憎み合っているかに見えたとしても、根底には深い愛が流れている。それが現在進行系では見えてこないように、この世界は造られているのかな。人と人との真実は記憶の中でしか正しく再生されることがないのかな。
失うことを知って初めてすべてを知る。とても胸が熱くなった。 


逆さに言えば、誤解し合ったり衝突し合うことさえも、大きな愛の一部だということで、躍起になって関係改善を図らなくたって良いのかもしれない。時間をかけてページはめくられる、そして最後には必ずすべてを見渡すことができる。そういうものなのだろうから。
後悔のまったくない人間関係など、存在しないのかもしれないと思うと、少し気持ちが楽になる。