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最も美しい愛の在り処

愛、アムール』 2012年、ミヒャエル・ハネケ監督作品を観た。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。
あまりに重く、消化しきれずにところどころ休みながら、時間をかけて鑑賞した。


知的で穏やかな老紳士が、壮絶な介護によって、少しずつ、少しずつ追い詰められていく様子を、抑揚を排したドキュメンタリーのようなタッチで追いかけていく。病院には二度と入れないで、との妻の一言が、夫には心臓にまで達する杭のごとく深く突き刺さったのだろうか。


この世界で、いちばん美しいものはどこに見つかるのだろうと考えた。それはきらびやかな眩しい光の中ではなく、生き生きと躍動する生命のエナジーの中にでもなく、あらゆるポジティブな選択の中でもない。この映画を見た後では、そんな気がしてならない。
明滅を繰り返し消えかかった弱い明かりの中に、完全なる闇とそうでない世界との境界に、袋小路に迷い込んだ魂の中に、最も美しく気高い「愛」の姿は発見されるように思えた。
私も含め多くの人間は、それに気づかないので、発見することができないだけなのではないかと。


部屋に飛び込んできた鳩は、何を意味していたのだろう。何かの暗喩だろうと言葉に無理矢理置き換えたら、どうにも安っぽくなってしまうだろうから、ただ感じるままにしておいたほうが良さそう。
最後のシーン、娘が部屋を訪れても、そこで起こったことにすぐに気付けない。夫婦は他者を排除した二人きりの世界に閉じこもり、その世界を完結させようとした。そこは、たとえ娘であっても入り込むことのできない、夫婦だけの場所だった。