心のなかに 透明なガラスのコップがある
水が 溢れる寸前まで入っている
あと一滴でも加えたら 溢れてしまいそう
何とかしてこの水をこぼれさせないようにと 必死になっていた
蛇口からなにかの拍子に ぽたりと一滴の水が垂れた
すると思った通り コップから水が溢れてしまった
本当は 溢れたのではない
コップそのものがいつの間にか ふっと消えてしまったのだ
収めるものがなくなって 水はだらしなくこぼれて広がる
すると しっかり閉めたはずの蛇口から 一滴また一滴と 水が落ちてくる
だんだん量が増えて 水はどんどん蛇口からこぼれてくる
汲んでも汲んでも汲みきれないほど 水がほとばしり出てくる
コップの水を守ろうと必死だったのに 一体何が起こったのだろう
コップさえなければ 水が勝手にほとばしり出てくるなんて
とどめておこうとするから 枯渇するかのような幻想を持つ
愛も 豊かさも 溢れさせていい
そうすると もっとたくさん 必要なだけ 湧き出て来るのだ