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夕焼けのなかの幻影

夕焼けの西の空たかく、つづら折りの道が伸びていて、その先に涅槃の国がある。涅槃という概念は当時の私にはなかったけれど、感覚的に捉えていたものを言葉に変換するなら、そう表現するのが正しいと思う。


幼い頃に、圧倒的な夕焼けの燃え盛るようなだいだい色に、そのような幻影を重ねて見ていた。その曲がりくねった道を、祖母に手を引かれて登っていくまぼろしを見た。まだそこへ行ってはいけないのに、そうわかっていたのに、まぼろしの中の私は深い郷愁のようなものを感じていて、迷うことなく懐かしい空へと登っていき、次第にだいだい色に溶けて消える。


夕焼け小焼けの赤とんぼ───という歌を聞くと、胸が張り裂けそうになった。私はまだこの世界にいたい。空に登っていくのは怖かった。その反面で、強烈に、夕焼けのなかに溶けていきたいという切ないほどの郷愁も確かに感じていた。
いちばん古い夢を思い出したついでに、記憶を探ってみると、その心象がいちばん古い記憶のような気がする。
夕焼けを見ると、打ちのめされたような、敗北感にも似た、圧倒的な切なさを今でも感じる。