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下り坂で見つけた花

『エターナル』 イ・ビョンホン主演の韓国映画を観た。

「下りるときにはよく見えた 上るときには見えなかったその花」
得ようとする行為は、結果何かを失うという現実をもたらすだけ。それに気づくのは必ず、何かを失ってから。
そして、究極的には、何も失っていなかったことを知る。すべてが終わった後で。
抑揚をおさえた淡々とした展開ながら、気づけば主人公の目線と同化して、作中に生きているような体験に導かれる。タイトルの意味が、最後になって胸に迫る。暫くの間、その余韻から醒めなかった。


教育のためにと自らシドニーへと送り出した妻子は、新天地で新たな人生を生き始めていた。妻は庇護のもとを離れ自分の力で羽ばたこうとし、確かな信頼に結ばれた新たなパートナーも存在する。
カリスマ的な求心力ある主人公のイメージが強かったイ・ビョンホンだけれど、そんなオーラは封印して、市井に生きる、社会の暗部に振り回されて傷つくばかりの平凡な主人公になりきっている。振り回されたのは、自分を社会に売り渡していたから。大切なものは何かに気づく頃には、時すでに遅し。
道連れとなるポメラニアンがとても可愛くて、かつて飼っていたネルとよく似ていたので、余計に感情移入してしまった。ネルとのお別れもオーバーラップして、胸が痛かった。
上り坂で何を失ったかを知らしめられながら山を下り、最後に見る風景は、壮大で、どこまでもひろがる、みなぎる世界。