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隕石の堆積場

アルターエゴ

巨きな帆立貝のような二枚貝があり、私はその頑なに閉ざされた口をこじ開けようとした。ボッティチェッリの絵画でヴィーナスが乗っているみたいな貝。その中には、裸の男性が、胎児のように丸くなって入っている。何故だかそのことをあらかじめ知っていた。意固地な殻と格闘し、ようやく貝はふたつにぱっくりと割れた。すると、中はもぬけの殻だった。


世界は蒼い闇に閉ざされていた。湖の底に沈んだ4時30分。朝方なのか夕方なのかわからない。
浴室の前の脱衣所に佇んでいる。浸水し、くるぶしの高さくらいまで水に浸かっていた。廊下や玄関には全く水は溜まっておらず、浴室と洗面所だけ。水は冷たくも温くもない。母がやってきて、原因を探す。(母は実在する母ではなく、全く別の人だった)もうひとり、知らない外国人女性もやってきて、外へ排水するためのパイプが壁を貫通して存在するはずが、それがまるごと無くなっていると言う。見ると、言うとおりパイプがなく、パイプの通っていた穴も消滅していた。貝の中の男が忽然と消えてしまったことと、関わりがあると直感した。


急激な睡魔に負け、私はベッドに倒れ込んだ。どれほど眠ったかわからない。覚醒めると、世界はまだ蒼かった。時計はまた4時30分を指している。早朝なのか夕暮なのかわからない。その狭間で、世界には青い色以外存在できない。
上体を起こすと、となりにブルーグレーの猫がいた。かつての飼い猫のロシアンブルーかと思う。でもそれはよくできたぬいぐるみだった。ベッドから降りようとするとき、ぬいぐるみを倒してしまった。うつ伏せになった猫は、「スミマセンデシター」と鳴いた。オウムのように人間の言葉を覚えてしまったのかしら。あの子は、猫とは思えないほど素晴らしく賢い子だったから、言葉くらい覚えても驚かない。でも発音するのは凄いことだと思った。私は猫がスミマセンデシターと鳴いたことを、人に話した。誰ひとり、それを信じてはくれなかった。