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謎の譜面

私がその譜面を食い入るように見ていたためか、先生は譜面を貸してくれた。それはギターのための譜面のようであり、ピアノの楽譜のようでもあり、そのどちらでもなかった。どうやって読み解いていいかわからない、謎の記号と濃密に絡まりあった私は、不思議な高揚感を得た。

パーティでも発表会でもないのに、何らかの目的で私たちはみな飾り立てていた。私は上半身が真白で、その下は緑と青のインクがにじみ合ったような、薄いシフォン生地のドレスを着ていた。体にタイトなデザインのそのドレスが恥ずかしく、黒の平凡なものに着替えたかった。でも私は楽譜を返さなければならなくて、洋菓子の並んだテーブルの前で待たなければならなかった。マドレーヌのようでマドレーヌでない、クグロフのようでクグロフでない、そんなような洋菓子が三種類。美しく整列した彼らも、誰かを待っているようだった。

ひとりのミュージシャンがやってきた。彼が例の楽譜の持ち主だと一目でわかる。私は、楽譜や楽器のケースや衣装や、様々なものをひとまとめにして彼に返した。彼はいたずらっ子のような眼と、少し意地の悪い高利貸しのような唇をしていた。
彼の音楽に心酔していたことを思い出す。彼は私を気に入ってくれて、様々な音楽の秘密をひそかに耳打ちしてくれた。彼の才能をあれほど尊敬していたと言うのに、暫くの間その事をすっかり忘れていた自分に気づく。すっぽりと抜け落ちたひととき、自分自身が自分のものでなかったような、一度途絶えた川がどこかからまた飄然と流れ始めていたような、奇妙な感覚。