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跡目争い

ゴッドファーザーみたいな映画を見ている。あるいは本当にその世界を生きている。どちらかわからない。
私はマフィアのような悪い組織の、ボスの三男だった。長男は、勢いばかりで実の伴わない、思慮に欠ける人物。次男は、臆病で無責任。三男の私は、一見善良でマフィア一家にそぐわないような好青年だけれど、一皮剥けばとても腹黒い。将来の跡目争いに向けて、十分な下準備をしている。長男と次男の側近は私が送り込んだスパイだったし、あらゆる情報は筒抜けだった。組織には全く興味がなく、跡を継ぐ意志など露程もないと周囲に信じ込ませることにも成功している。父の信頼も得ているが、万が一のときには、兄二人を抹殺してでもすべてを手にする決意は固まっているし、それも計画に組み込まれている。

何もかもうまく行き過ぎて、入念な計画などはじめから必要でなく、ただ黙っていても後継者の座は転がり込んできた気がする。知略を無駄遣いしたようで、すべてが無駄な努力だったかのようで、悔しいような、物悲しいような気分。手に入るとわかった途端に、その宝はにわかに輝きを失う。ボスの座についたところで、どれほど満たされるものだろうかと疑い始めている。