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甘口であたたかい後味

韓国ドラマ『愛の不時着』 視聴終了した。

脱北者の方が実際に監修に参加していて、北の庶民の暮らしがリアルに描かれていると評判のこの作品。流行りものにはあまり手を出さない方だけど、これは誘惑に負けて観てしまった。

ワンシーン出演した脱北者の方が、かつて北にいるときに隠れて観た韓国ドラマ「私の名前はキム・サムスン」に出演していたヒョンビンが実際に目前にいて、とても妙な気分だったと話していた記事を読んで、印象深かった。私達でも観ていたドラマの主演が目の前にいたらびっくりしてドキドキするだろうに、より重い背景を背負った方はどれだけ感慨深いものだろうと想像すると、なんとも言えない気持ちになる。

何をさせても完璧な無欠のスーパーヒーローが、ヒロインを守ろうと奔走し、どこまでも献身的に尽くす。ただ無欠なだけでなく、生真面目で、どこか抜けていて内面が分かりやすく、母性本能をくすぐるところまで含めて完璧な男性像。観終わったあとにヒョンビンロスになる人が続出というのもよくわかる気がした。
ただ、激甘の恋愛シーンが気恥ずかしくなってしまい、どこかのめり込めない感覚を持った。私だったらこれほど献身的になれるだろうか、私自身これほどの献身を捧げられるだけの魅力ある人物であるだろうかと、妙な自省が入ってしまう悪い癖が出て、どっぷりと嵌まり込んで酔うことができず、冷静になってしまう自分を発見したり。

私としてはもう一つのラブライン、ピョンヤンの裕福な娘と、ソウルから逃げてきた詐欺師との恋のほうが、切なくて良かったな。胡散臭く見えていた彼の背景が明らかになるにつれて、観ている私も、彼女と同じく気づけば恋に落ちていたような感覚になった。

北朝鮮の田舎での暮らし、近所のおばさんたちと部下の若い軍人たちが、みんなキャラが立っていて、造形がとても巧みだと感じた。欠点も含めて人間らしく愛らしい人たちばかりで、人間関係のもたらす良い部分だけにフォーカスし、嫌な部分は完璧に切り捨てて、率直に人間っていいものだと思わせてくれる。その点は韓国ドラマ全般に共通していて、そこがハートウォーミングで癒やされる理由でもある。視聴者の求めるものを分析して、組み立て商品化する、ドラマというものはパッケージ商品なんだと改めて思う。その意味でこのドラマは、ヒットして当然の、とても優れた商品と言えると思う。

部下の一人が韓国ドラマに夢中で、任務中に隠れて観た「天国の階段」のチェ・ジウに実際に会わせてもらい、夢のようなひとときを過ごすというシーンがあって、笑えた。他にもチョン・ギョンホ、キム・スヒョンカメオ出演していて、そういう細かい所のサービスも行き届いている。