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隕石の堆積場

月の魔術

月が雫をこぼしてる! あれは月の涙かな? あっ、いま月が裏返ったよ!
私は誰かと手をつないで歩きながら、ずっと夜空を見上げつづけている。月が私たちを観客に手品でも披露しているかのようで、一瞬も見逃せない。いつもと同じように黄色いその色が、何かとても新鮮な、初めて見る色彩のように感じる。

月は泣いたり笑ったり忙しい。月の涙は黄色く半透明で、夜空に散ったあと、きめ細かいスポンジのような闇に吸い込まれて消える。あの雫はどんな味がするのだろう。舌の上で想像する。ほの甘く、清らかな味だろう。
月がこんなに感情豊かだったなんて知らなかったねと、長い坂道を下りながら、私たちは話した。真黒な甍の上を、墨で描いたように雲が低く流れていた。この世界は月のためにあり、ただ月のためだけに用意された舞台であるのだと気づいた。