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息もできないほどの退屈

ビルの一階ロビーで人を待つ。誰かと一緒に朝早くここへやってきて、その誰かの用事が済むまでここで待っている。
昼下がり、ガラス張りで通りから中がよく見えるそのロビーの片隅で、白い小さなソファに座り、退屈しのぎにテレビを見ている。テレビは高い位置に設置され、少し首が痛かった。午後の陽射しが溢れんばかりになだれ込み、何もかもが明らかで、ガラスに反射する光の角度まで目算できそうだった。

テレビでは、韓流ドラマのダイジェスト版みたいなものを放送している。かつて見たことのあるドラマのワンシーンが流れた。チェ・ジウとその兄役の俳優が、まさに私が今いるビルの入口にいる映像。二人は中へ入ろうと、入口前の階段に足をかけたまま会話する。
私はもうすっかり人気者なんだからね!私がステージで唄うのを見たらびっくりするから!
そうなのか、お父さんは何も知らなかった、お前がそんなに活躍していたなんて。

あれ、お父さんだったっけ? お兄さんじゃなかったっけ。おかしいな。記憶を手繰ってみても、どうしてもその俳優は主人公の兄だった気がする。年格好を考えたって父親なはずがない。狐につままれたような気分でいるうちに、二人のややクサい芝居(失礼)が終わり、画面には次のドラマが紹介されている。

私の座っていたソファはいつの間にか、長机とそれを囲むたくさんのパイプ椅子に変わり、私は大勢の中のひとりとしてパイプ椅子のひとつに腰掛けていた。
人々の話題は、テレビのなかの俳優が大企業の汚職に関わっているというような噂。ゴシップ的な興味を持つ人々と、政治的なニュースとして関心がある人々が、ひとつの机の上にそれぞれの意見をぶちまけた。トランプとタロットカードがごちゃまぜになったようなテーブルの上のエネルギーが、眠りについた蛇のように、渦を巻くような形で滞留していた。私はどちらだって重要なことだとは思わなかった。

私は退屈していた。待っている誰かが早く来ないだろうか。いつまで待てばいいのだろう。うんざりするほどの無為の積み重なり。その下敷きになって息もできない。
待っていたのは母だったような気もするし、他の誰か、とても大切な人だったような気もするし、その点だけが靄がかかったように曖昧だった。