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Dépôt de Météorites

壮大な人体実験

山崎製パンが競合他社を告発するような声明を出したことがあった。他社はイーストフードなど添加物を不使用と謳いながら、実際は原材料表記をしなくても済むような他の方法で添加物を加え、事実上はイーストフードを加えているのと同じようなものであるのに、無添加と大々的に表記して売り出すのは顧客を騙しているのと同じだ──というような内容だった。

それを聞いて、他の人はどう感じたかわからないけれど、私はなおさらヤマザキの姿勢に疑問を持った。
他社は確かに不使用と謳いながらうまくすり抜ける術を見つけて、イーストフードと明記しなくていい方法を編み出したのかもしれないし、それは確かに良いことではないと思う。けれど、顧客が安全性を強く求めているという声に向き合った結果だし、コストと品質の面で採算が取れずに仕方なくしたことなのかもしれない。その辺りをクリアできるなら、安全性を重視し、高めていく努力をしていく「可能性」が見えないわけではないな、と感じた。

それに対して、ヤマザキイーストフードは危険なものではないと言い張り、他社を貶めるような形で自社の正当性を主張した。それが事実かどうかということ以上に、その姿勢そのものにげんなりした、というのが正直な気持ちだった。
この会社は、パンの安全性が強く求められる時代の変化に完全に乗り遅れているし、これからも安全性を重視する姿勢は全く期待できないに違いない。もともとこの会社のパンを好んで食べることはなかったけど、これからはもっと食べることはないだろうと強く思った。
より添加物を減らす、あるいはより安全性の高い添加物を使う競争をしてほしい。
もちろんこれはただの個人的な意見で、違う考えの人々を否定するつもりは毛頭ありません。

この件がきっかけかどうかはわからないけれど、添加物は必要で、少しも怖いものではない、無闇にに怖がるのは化学的知識がないからだとか、保存料も農薬も品質を維持するためには必要なもので、むしろありがたいものだ、というような論調の記事が雨後の筍のごとく出て、恐ろしく感じた。
地球温暖化はフェイクだ!環境汚染なんか何の問題もない! とかいうのになんだかそっくりな気がして、いったい世界で何が起こっているのか、気味が悪いと感じた。


以前には、今よりも食品添加物を気にして、徹底的に避けるようにしていた時期もあった。若い頃摂食障害を患って、それを治すために始めた食事療法をきっかけに、一時はかなりシビアな管理をしていた。その頃は市販のパン等は一口も食べることはなかった。
最近は随分甘くなって、いろいろ食べても平気になってしまったけれど、当時は感覚が鋭敏になっていて、市販品はなんとなく薬臭く感じて、食べたくとも食べられないという状態だった。添加物探知機だと言って、家族はよく笑っていた。

添加物が添加されるようになって高々数十年。安全だと言い切るにはまだ短すぎるのでは。それに、病気を引き起こすといった明確な因果関係は証明しにくい。あらゆる要因が複合的に作用するのに、添加物のせいかどうか、そこをはっきりさせることは不可能に近い。だから食べても大丈夫なんだと開き直るのではなく、現在もまだ人体実験を続けているような状態なのだということを、常に頭のどこかに置いておかなければと思う。

あまり気にしすぎたら、食べるものがなくなっちゃう。神経質になりすぎたらストレスになって体に悪いから、なんでも偏りなく食べればいいんだ──等と言う人がよくいる。これほど典型的な思考停止状態って他にある?