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隕石の堆積場

滑降

山あいの清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。辺りは新緑の他に何も目に付くものがない。
自転車にまたがり、急な坂道の上にいる。これから、ここを滑り下りるのだ。なぜだか不安が過る。ブレーキはきゅっと握りしめれば手応えがあり、きちんと車輪の回転を制御してくれるはずだった。なぜ不安を抱くのか、自分がわからない。

急な坂を見下ろしている私を、徒歩のお婆さんが追い抜いていった。坂は細く、スキーのジャンプ台の上にいるような錯覚を覚える。
転がり落ちれば、自転車も私の身体もバラバラに分解され、宙を舞うような気がする。既視感のある恐れと、出処のわからない不思議な快感とが混じり合って、私を支配している。

自転車は分割され、車輪が外れ、ハンドルもサドルも砕けて空に飛び散る。私の身体も細かい細胞レベルに分割され、風と共に舞い踊る。そんなビジョンが脳裏を掠めた。
何らかのエネルギーが刻一刻と、私に蓄積されていく。充電が完了した瞬間、溢れ出すように滑降が開始されるのだということを、予め知っているような気がした。 

 

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