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原色の愚者

私と恋人は若く、二十歳くらいに見えた。何も知らないがゆえの豪胆さがあり、怖いもの知らずで、シンプルに未来の輝きを信じている。タロットの愚者のカードのように思えた。私たちは、カラフルな原色を重ね合わせたピエロのような服装で、特に鮮やかな黄色が目を引いた。

銀色のステンレスで出来たカートのような乗り物があり、彼は、それに乗ろうと言った。これに乗れば、空を飛ぶこともできる。私は、それは無理だと言った。二階の窓から飛び出せば、コンクリートの地面に打ち付けられて大破する。

私たちは実際に試してみることにした。二階の窓から空中へと勢いよく飛び出した銀色のカートは、真っ逆さまに地面へと墜落した。けれどカートは無事に着地して、私たちを載せたまま数メートルほど惰性で進んだ。私たちには何の怪我もなかった。カートも無傷で、太陽の下、金属的な光沢を湛えて、破顔一笑するかのように輝いていた。彼の言ったことも私の言ったことも正しかったし、同時に間違っていた。空は飛べなかったけれど、大破もしなかったのだから。

恋人は病院に行き、診察を受けると、認知症だと診断された。黄色い服に身を包んで、無垢に微笑む彼は、その意味を理解していなかった。こんなに若いのに認知症になるなんて。私は悲しかったけれど、悲しんだところで何も変わらないことも分かっていた。
彼が私のことを忘れてしまう日が近い将来やってくる。それまでに、悔いを残さないだけ、思う存分愛されたいと願い、裸の背中に頬をうずめた。