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隕石の堆積場

淡い水色のシャツ

CDのジャケットは、黒いキャンバスの上、赤や黄色や、蛍光ピンクの絵の具が舞い踊る絵画。自我を廃して、神の意志の通り道となり、色彩を鏤めたオートマティック・ペインティングのようなものだった。

ケースからCDを取り出し、恐る恐る再生する。音声はくぐもっていて、ボリュームを上げても、靄がかかったように聞き取りにくかった。ジャケットと同じ図柄の描かれたCDを、プレイヤーから取り出そうとする。ディスクは非常に熱せられていて、指を容赦なくはじく。持ち上げると、とろけたようにぐにゃりと曲がり、自重で滴り落ちそうになる。空気で冷やされ、固まって、中央からパキリと音を立てて割れる。細切れになった絵画が、色とりどりの薔薇の花弁のように、床に散らばった。
想い人の作り出す音楽を、これで聴くことはできなくなった。絶望よりも深い安堵が、私を侵していく。

彼はステージに立っている。知人のステージに友情出演しているようだ。場違いな場所に足を踏み入れ、申し訳無さそうにはにかんでいる、そんな光景に私には見えた。

彼は、淡い水色のシャツを無造作に着崩していた。ひろがる乳の海に、たった一滴青いインクを垂らしたような、消え入るような水色。その青色の生まれた場所を、私は知っているような気がした。しかし、ステージの強引で独尊的な照明のもとでは、限りなく幽かな色彩は、いとも容易く殺されてしまう。あるいは単純に、照明によって真っ白なシャツが青みがかって見えただけかもしれない。合理的に考えれば、そうに違いなかった。

共演するステージ上のメンバーに対し、観客に対し、彼は深々と頭を下げた。両腕を体の横に添わせ、掌を太腿に押し当て、四方八方に向けての敬礼。やや長めの髪が、額に、頬に落ちかかる。そのたび神経質に、頭を僅かに後ろへと振り、整えようとする。謙遜と傲慢が同居するかのような、どことはなしに矛盾を感じさせるその仕草を目にして、体の深部の、そのまた奥から、熱さが込み上げてくる。名状しがたいその熱は、たった一つの出口を求めて、目頭に凝結した。

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