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青い悲しみの気配

どこか東欧の古い街並みにいる。近未来的な、どこまでも冷ややかで無機質な建造物に混じり、数百年の息吹を感じさせる古い建物が林立している。秩序の消えたその街で、オリンピックのような大規模な競技大会が催される。

私は、想いを寄せる男性と一緒に観戦をしたかった。スポーツの内容などどうでもよく、その人と共に在ることだけが大切だった。彼は、男子のテニスを観戦したいと言った。その言葉に、私はなぜだか、冷たく突き放されたように感じた。その感覚は曖昧で捉えがたいものだったけれど、意識のなかで容赦なく拡大していき、内なる闇がさらなる闇に刻々と沈んでいく。

彼は私と一緒にいたくないのだろうと、闇はその気配を翻訳した。これ以上しつこくしたら嫌われてしまうかもしれない。私は彼と離れて、独りで競技会場を彷徨った。
自らの勝手な判断で、勝手に傷心した自分の心が、得体の知れない未知の生物のように蠢いている。

 

巨大な教会の中庭に、池のような沼のような水溜りがあった。水際はさざ波立って、小さな海のようだった。水は限りなく透き通っていて、淡く棚引く青い気配が揺れていた。その清らかさはこの世のものとは思えない。その水に足を浸しながら、世界をファインダー越しに見つめ、一幅の絵として保存したい衝動に駆られた。肩からかけていたバッグの底を探ってみる。カメラをホテルの部屋に置いてきたことに気づく。

隣に、古い友人二人が立っている。いっとき孤独を紛らすことができても、より深い本質的な孤独を深めるだけだということを私は知っていた。彼らの見ているものは全く別の絵画であることを。同じものを見つめていても、それを映し出すスクリーンがあまりにも違いすぎるので、そこで認識されるものも全く異なる。それはあまりにも当然のことながら、当然と受け止め切れず、乾き切ってひび割れた樹皮のように、心がささくれ立つ。

友人たちは、売店でどんなお菓子を買うかを話していた。一人が立ち去り、何かを買いに行った。それきり彼女とははぐれてしまった。大勢の人が行き交い、喧騒が響き合う祭典の場で、世界と溶け合えず、世界から弾き出されたように感じられる。どんなにしつこくしても、あの人から離れなければよかった。テニスの会場から立ち去らなければよかった。カメラを置いてきたこともそう、何もかも判断は自分でしたこと。過去の選択が、今の自分の足をすくって転ばせ、ほくそ笑んでいるかのようで、過去の自分に激しく苛立つ。