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Dépôt de Météorites

芽吹き

体中のあちこちの毛穴から、小さな芽が出て、緑色の細かい葉が茂りだす。胴体や腕、脚のあちこちに、圧力に耐えかねたように次々と芽吹いてくる。肌の上に隆起してくる緑色の異物。苔みたいに平らに浸食して来て、鱗となったように肌を覆う箇所もあった。陰毛の辺りには特にたくさんの葉が茂っていた。寝返りを打った際に気づき、俄に受け入れられずに、しばし呆然とそれらを見つめていた。

コンクリートの割れ目から伸び出してきた雑草を抜くように、恐る恐るひとつの芽を抜いた。肌の内側から灰白色の細かい根が抜き取れた。毛穴は毒虫に刺されたようにぷくりと膨らんだ。ひとつ、またひとつと芽を抜き取っていく。次第にそれに夢中になっていき、目を皿のようにして体のあちこちを探す。すべて抜き終えたあとには、肌の上にランダムに配置された、たくさんの赤紫色に滲んだ突起が表出した。
治るだろうかと不安になり、皮膚科に行かなくてはと考える。なにか悪い病に罹ったのではという懸念がふつふつと湧き上がる。

病院へと出掛けた私はなぜかベーカリーに寄り、父のための菓子パンを買わなければと思う。父の好みに合わせたパンをいくつか選び、トレイごと店の外へ持ち出した。たくさんのパンを抱え込んで、淡いピンク色のトレイを路端の茂みの上に放り出す。同じように投げ捨ててある薄汚れたトレイがいくつかあった。小走りで信号を渡ろうとする。腕の中からこぼれて、横断歩道の上にパンがいくつか転がる。みるみるうちに、パンは無関心なタイヤに冷たく踏み潰された。一人の親切そうな女性が振り返り、その様を気の毒そうに見ていた。


ひどい偏食の父のために、好みのパンを買いに走ったことがよくあった。そんなことが今頃夢に出る不思議。皮膚科に行こうなんて、夢の中なのに妙に理性的で辻褄が合っているのも可笑しい。