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黄色い花の残像

こんな冬の盛りに
玄関先のコンクリートの割れ目から
黄色いちっちゃな花が咲いていた
可愛らしい雑草を思わず手折って
小さい花瓶に活けた けれど
そのままにしてあげればよかったと後で思った

隣の敷地はかつては砂利が敷かれていて
その隙間からたんぽぽが咲いていた
ネルは散歩のときに何故だか
たんぽぽに寄って行きたがった
黄色い花がネルによく似合っていた
花は大量に栽培するものでなく
こうやって密やかに咲いていて欲しい
人を魅了しないと存在価値がないと宿命付けられる
クローンのように並んだ切り花はどこか残酷で
胸が苦しくなる

誰にも見つからず
物陰で何も主張せず
ただ咲いて枯れていく生命の美
たんぽぽが溢れていた敷地には
去年新しい家が建って
記憶の中に引っ越しを余儀なくされた
ネルとたんぽぽの残像