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軽薄な男の慈愛に満ちた微笑み

軽薄そうな男性に出会った。私の部屋に上がり込んで、ベッドのそばで膝を抱えるように座り込んでいる。
軽薄な仮面、その他諸々の仮面を、器用に付け替えてその場に適した顔をつくる。その隙間の一瞬に、素顔を敢えて覗かせることも怠らない。正確には素顔らしきものを、わざと覗かせる。


流れるように上手に言葉を紡ぎ、こちらの心の壁を易々と解くことをやってのける。他に好きな男がいるんだろ。全て見透かされている。こんな素敵な人を泣かせるなんてとんでもない奴だ、そいつの代わりをしてあげてもいいよ、と明るく軽く言い放った。胸が痛くてたまらない。
唇に触れると、微かに違和感があった。でもそんな違和感はどうでもいいくだらないことに思えた。


この人は私を通り過ぎていくだけ。わかっているから傷つくこともない。心をもう少しだけ開けばそれで済む。
口もとにへらへらした笑みを浮かべて、私の思いを値踏みするように彼は見ていた。その眼差しは慈愛に満ちていた。