SITE MÉTÉORIQUE

Dépôt de Météorites

錦鯉

庭に出ると、世界は白夜のなかに沈んでいる感じがした。ほの暗く白い闇のなかで、自宅のガレージが池になっているのを見つける。池は家の前の道路まで続いていた。塀の上に見知らぬ猫がいる。猫は身構えると、池のなかにぽちゃんと音を立てて飛び込んだ。水…

とろける毒ケーキ

夢のなかでドラマを観ていた。キム・ナムギルとムン・チェウォンが主演のスパイアクションぽい作品。王女がパビリオン竣工の祝賀儀式に参列した際、大きな柱が突然折れて大惨事となる。主演の二人は国家情報院のエージェントか何かで、王女を土壇場で救出す…

青白い幽体

ベッドで横向きに眠っていると、腕の中にネルちゃん(かつての愛犬)がいるのが感じられた。布団をかぶっていたしわざわざ確かめようとはしなかったけれど、被毛のふわふわした感覚とぬくもりでたしかにここにネルちゃんが一緒にいるんだと感じた。 その直後…

言葉をマスター

父の小言から逃れて自室に閉じこもり、ベッドの上に転がって、慰めを求めてラジオをつける。どこの局かも確かめないで耳を預ける。なんの番組だかわからないが、イ・ビョンホンが出ていて、しかもほとんど完璧な日本語を操っているのでびっくりする。アクセ…

二度目の卒業

ラジオから新進気鋭のバンドの紹介。ラジオなんだけどなぜか映像も配信されており、次々に新しいバンドの音楽がワンフレーズ、そして彼らの日常生活の一コマや、応援している友人やファンなどの声が手短に紹介される。紹介リストには聞いたことのない何十組…

メッセージ

掃き出し窓の外は真っ白い光の世界で、眩しさに滲んで見える。窓辺に立っている父の背中が見える。父はなぜだか何も身に着けておらず、裸のままで真っ白い光と向かい合っていた。白いレースのカーテンが窓を縁取って、柔らかく揺れている。 それに対して室内…

両性具有

蒼い闇に沈んだ古い診察室で、カンテラの灯りが滲んでいる。医師と私は対面して座っていた。すべてのものの影が濃く、そして均一な黒さで、医師たちや私といった実態を持つ肉体が投影するものではなく、むしろその黒々とした何かの投影が私たちであるような…

痙攣

ベッドに眠る私は身体が意のままにならず、痙攣のように震えたり、ビクッとしたり、海老反りになったり、他人に操作されているかのように動いてしまう。それが何故か決して不快ではなく、むしろその動きに身を委ねることが徐々に心地よくなってくる。誰かが…

ノイズ

暗闇の中を走る車の後部座席で、流れている音楽に耳を傾けるが、大音量であるがゆえに快適でない。運転席には、歳が離れているせいかあまり親しく話したことのない従兄。音楽は大音量なのに、何の曲なのかどのようなメロディーなのかが全く感じ取れない。辛…

石読みのレッスン

かつてピアノを習っていたT先生のお宅。様々な天然石が飾られ、先生自身も大振りのネックレスをしている。くすんだ淡い緑の石と、茶色でもえんじでも紫でもない分類を拒むような曖昧な色の石とが、交互に並んでいるネックレス。その高潔な曖昧さを持つ石に…

鍋のなかの子犬

コーンポタージュのような、淡いクリーム色の液体を鍋に入れ、火を着ける。ゆっくりと温められていく過程に、私は鍋から離れ、部屋の中にいるはずの三匹の犬を探す。二匹は元気に戯れていた。もう一匹の、家に来たばかりの子犬が見当たらない。私は鍋へと戻…

接写

私はその人の顔が見られない。恥ずかしいからか、怖いからか、愛しすぎるからなのか、解らない。目を背け、逃げ続けているのに、そうすればするほど彼の顔が明確に瞼に映り始める。マクロレンズで接写するように、目元の皺の一本一本、鼻筋や小鼻の形、笑う…

脳内ハッキング

職場に持ち込んだぬいぐるみや人形が幾つか。自分の癒やしのために並べていたその子達をじっと見つめていると、昼間の何時間しか一緒にいないのに、彼らに苦痛を強いているような気分になってくる。家に連れて帰ることを決め、大きめのトートバッグに彼らを…

芽吹き

体中のあちこちの毛穴から、小さな芽が出て、緑色の細かい葉が茂りだす。胴体や腕、脚のあちこちに、圧力に耐えかねたように次々と芽吹いてくる。肌の上に隆起してくる緑色の異物。苔みたいに平らに浸食して来て、鱗となったように肌を覆う箇所もあった。陰…

蠍座の箱を開ける

十二星座の可愛らしいイラストが描かれたパッケージの、密封されたトレイが十二個。息を殺し、そのうち一つの蓋のフィルムをほんの少し剥がす。何事も起こらなくて安心する。蠍の絵の描かれたものが気になる。もし蠍が出てきたら大変。でもどうしても気にな…

過去の写真を燃やす

大きな画集の中に、密かに心を寄せていた人の写真を隠していた。新聞紙ほどの大きさの分厚い画集と画集の間に挟まれた、雑誌か何かから切り取られた笑顔の写真。広いロッカーのような、個人のものを収納するスペースに、様々なものに紛れて画集はしまわれて…

針のような髪

テーブルの上に髪の毛が落ちていて、私はそれを手にとって弄ぶ。とても硬く芯のある短い髪。針かと見紛うような、下手をすると指に刺さりそうな危うい毛髪は、指先で銀色に鈍く光った。その髪質から、同席している男性のものだろうと推測できた。 彼とその友…

オレンジ色の髪の天使

その女性は、熟れたオレンジのような色の豊かな髪を腰のあたりまで垂らし、サイドの髪を一部だけ三編みにしていた。何故だかその若い女性が、自分を守護する役目の天使だということが判っていた。 天使は、私を様々な場所へ連れ回した。家具売り場のような場…

蝶ネクタイを切る

木曜日の時間割を見ると、一時限目が社会科関連の授業、歴史でも公民でも倫理でもなく、見たことのない科目だった。二時限からは何をやるのかさっぱりわからない科目名がずらりと書かれている。 朝起きて、かばんに何を詰めていったらいいか考えてしまう。ま…

作品レビュー

かつて書いた『無彩色の寓話』という短い小説もどきの文章が、雑誌に掲載されることになる。本当に載っているのか?と半信半疑でページをめくると、いくつかの作品に混じって本当に掲載されていた。くすぐったいような、華麗なマジックに騙されているかのよ…

手のひらに隠した貝殻

彼は、とても女性的な男性だった。見た目も、心の中身も、誰よりも繊細で、艷やかな絹のように傷つきやすかった。彼自身、それをコンプレックスに感じている。彼はそれを語ったわけではなかったけれど、私には手に取るように理解できた。気づいているだろう…

夾竹桃

緩いカーブの坂道を下りながら、家へと歩く。中学校の裏手の、よく知る坂道だけれど、あたりは薄暗く、鉛のような灰色の重たい粒子が軋み合っている。道路脇の幼稚園の敷地から、はみ出た木々が侵食している。立派な枝振りで、一枚ずつの葉が異常に大きい。…

青い悲しみの気配

どこか東欧の古い街並みにいる。近未来的な、どこまでも冷ややかで無機質な建造物に混じり、数百年の息吹を感じさせる古い建物が林立している。秩序の消えたその街で、オリンピックのような大規模な競技大会が催される。 私は、想いを寄せる男性と一緒に観戦…

淡い水色のシャツ

CDのジャケットは、黒いキャンバスの上、赤や黄色や、蛍光ピンクの絵の具が舞い踊る絵画。自我を廃して、神の意志の通り道となり、色彩を鏤めたオートマティック・ペインティングのようなものだった。 ケースからCDを取り出し、恐る恐る再生する。音声はくぐ…

椅子取りゲーム

通っていた高校の最寄りのH駅に向けて、自転車を漕いでいる。駅前はしばらく見ないうちに、特殊な変異を遂げた生物のように見ず知らずのものに変貌していた。ひしめき合う原色と幾何学の洪水。熱を帯びた人いきれと喧騒。あらゆるエネルギーが不自然に圧縮…

双子の相剋

双子の兄は、優秀ではあるが屈折し、心の闇に支配され、その支配を外界に投影しようと生きる。双子の弟は、自由奔放で、渓谷を吹き渡る風のような清々しさを持つ。兄は徒党を組み、自らの生み出すルールや不文律に絶対忠誠を求める。それに背く者やはみ出る…

溶けたノートパソコン

愛用のMacBookに向かって、何か夢中で作業している時に、父にしつこく話しかけられて苛立つ。半分無視してあしらった。父は腹を立てたのか、私のMacBookを絨毯の上に置いた。絨毯はみるみる色を変え、銀色に輝き始める。しだいに境目は曖昧になり、環境に溶…

原色の愚者

私と恋人は若く、二十歳くらいに見えた。何も知らないがゆえの豪胆さがあり、怖いもの知らずで、シンプルに未来の輝きを信じている。タロットの愚者のカードのように思えた。私たちは、カラフルな原色を重ね合わせたピエロのような服装で、特に鮮やかな黄色…

相談者

二十歳くらいのの若い女性に相談を受ける。資格か何かの勉強をしなくてはいけなくて、朝方まで机に向かって頑張っているのに結果が出せないと言う。 何時間机に向かったから凄いんだと、時間だけで判断していませんか? 音楽を聞きながらとか、ラジオを聞き…

漂白された闇

真っ白で艷やかな床が一面続いていて、その上に、寸分狂わず並べられたナイフやフォークのように、人々が並んで横になっている。その展開図は限りなく続いているかに見える。壁も天井も白く、白過ぎて、それが壁なのかどうかわからない。壁という概念や言葉…