SITE MÉTÉORIQUE

Dépôt de Météorites

雨音の独白

インクの切れた万年筆で手紙をしたためました埃を被った灯りの下でぼんやりと太陽の亡霊が揺れましたペンのキャップを閉めたなら明日のスープを煮つめるのです錆を落とすために握りしめた右手が痺れます長い長い晩春の雨流れる雫を数えます喉に絡みつく飽和…

秘薬

あなたを見つめていられれば幸せだったあなたを欲しいと願ったからあなたを見つめることは苦しみに変わった 痛みのためあなたを見つめることができなくなったわたしはあなたを失ってわたし自身を失った もう一度あなたを見つめたいただそれだけが私の願いと…

ソフトフォーカス

鋭い照準は残酷に綿密にこの皮を剥いでいく 両眼を閉ざし柔らかく滲ませた曖昧な輪郭と想念を織り合わせて出来上がるざらりとした手触り世界は夢 もとめる心がなければ 苦しみもない そして 深い悦びもない毒蛇をまるごと飲み込んだ者だけに金糸が一筋 垂ら…

邂逅の時

花弁のように降り積もる悔恨を柔らかく踏みしだく前に木枯らしが奪い去る吹き溜まる桃色の溜息に冬は恋をした あなたの背中に降りしきる黎明の雪首筋にほどけていく結晶をわたしはつぶさに見つめている 振り返らないで もう一瞬少しだけ怖いから 瞳のなかに…

世界を受胎する

胸に圧縮した憤りも限りない密度の結晶となれば透明な水のような静けさを抱く 沈んでいく なにもかもが沈殿したのちに荒涼とした世界はひとしずくに凝縮される それを飲み干すのは かんたんなこと 見つめていたのはあなたの影だったいいえ わたしの影だった…

旧い試験紙

水辺を横切る翼の影湧き出でる形有る生命を弔っていく涼み行く魂のリファレンスこの世界に色を添える 水のなかに揺れ続ける想いはどこまでも薄められた結果最新機器により検出不能どこまでも拡められた結果色は色を見失った 旧い試験紙が示す永遠より巨きな…

生霊の血潮

身体をとび出して 魂だけが彷徨う身体と 心と 魂の輪郭が 僅かにずれたまま乱視の瞳で見つめる世界何重の可能性が見える 美しい幻視に酔う幾つもの世界に 同時に存在する此処にいながら 在りたい場所にも存在する 霊となってまで 貴方のそばに在りたいそれは…

真っ白な狂気

枠の外へと出ることは正気を失うことじゃない秩序を見失うことイコール狂気だと思うなら 一度狂ってみたら良い中にいる側は外へ出たものを排除しようとする自由な光の瞬きを意識下で羨んでいるから脱落ではなくいち抜けたのだ 檻の形に合わせて自らの枝を切…

切り花はグロテスク

飽和した蒸気のような苛立ち生きることの限りない労役それを利き手に感じるのならもう片方で違うものを夢見ているということどうやって右手に持ち替えればいいのか左手を利き手にするべく鍛錬するしかないのか 無残に切り取られて根を失った花のように点滴を…