SITE MÉTÉORIQUE

Dépôt de Météorites

2021-01-01から1年間の記事一覧

蝶ネクタイを切る

木曜日の時間割を見ると、一時限目が社会科関連の授業、歴史でも公民でも倫理でもなく、見たことのない科目だった。二時限からは何をやるのかさっぱりわからない科目名がずらりと書かれている。 朝起きて、かばんに何を詰めていったらいいか考えてしまう。ま…

作品レビュー

かつて書いた『無彩色の寓話』という短い小説もどきの文章が、雑誌に掲載されることになる。本当に載っているのか?と半信半疑でページをめくると、いくつかの作品に混じって本当に掲載されていた。くすぐったいような、華麗なマジックに騙されているかのよ…

鈍感になる

繊細なのが好きだったから鈍感な人が大嫌いだったから自分が鈍感な人にはなれなかった繊細なままでいたかった 変わりたくなかった 繊細すぎて生きるのが苦しくて 死んでしまいたいくらいならキャラ変すればいいだけだった 鈍感な自分を認めて受け入れるかな…

自分を苦しめる理由

自分に 苦しめ苦しめもっと苦しむべきだって思ってたできの悪いお前なんかもっと苦しまなくてはだめなんだってそう言っていたのは 他の誰でもなく 私だ醜いお前なんか できの悪いお前なんかそのままでは価値がないと 料理ができなくても きれいに着飾れなく…

エラー

鏡を見るのが怖かったのは自分が内側で認識していることと外側の世界の現実が一致しないことを知らしめられるからそして内側の認識のほうが間違っていると信じてしまうから写っているもの見えているもののほうがエラーだとは思いもしないで 真実は外側の世界…

手のひらに隠した貝殻

彼は、とても女性的な男性だった。見た目も、心の中身も、誰よりも繊細で、艷やかな絹のように傷つきやすかった。彼自身、それをコンプレックスに感じている。彼はそれを語ったわけではなかったけれど、私には手に取るように理解できた。気づいているだろう…

どうにでもなれ

人生はロールプレイングゲーム自分がその主人公ゲームのルールは主人公にも変えられない大まかな筋書きも変えられない どうにでもなれどう転んでも どうにかなるどう転ぶかを楽しんで観ている眼差しを持つ

宇宙のかけら

私は 社会に生きたくはない世界に生きたい宇宙に生きたい これが私のいつも戻る場所でいつも再確認すること宇宙のひとかけらであることをいつも忘れずにいたい 社会にどう適応するかなんていのちから見るならば なんてちっぽけで 近視眼的なこと 長い迷路に…

夾竹桃

緩いカーブの坂道を下りながら、家へと歩く。中学校の裏手の、よく知る坂道だけれど、あたりは薄暗く、鉛のような灰色の重たい粒子が軋み合っている。道路脇の幼稚園の敷地から、はみ出た木々が侵食している。立派な枝振りで、一枚ずつの葉が異常に大きい。…

こころとからだへの信頼

体の声を聞きなさい ってよく言うけれど 体がうまく働いているときは多少は聞いていたかもしれないうまく働いているときだけは優しくしていた うまく行かないときは鞭を打つなぜちゃんと働かないんだろうと不安になってなんとかして働くように仕向けようと躍…

ドリアンのような臭気

『毒戦 BELIEVER』 2018年の韓国映画を観た。 パク・チャヌク映画の脚本家だって。たしかに、華美で過剰でグロテスクで、どこかキュビズムの絵画を思わせるようなテイストが共通している。ドライでザラリとした質感のノワールじゃなく、ジトッとした情のから…

嫌なことはしない

嫌なことはしない 気の向かないときはしない何の我慢もせず 浅はかな配慮もしない 何かをしたいような気がしても いざ取り掛かるには抵抗が強すぎるだとしたら無理に足掻かずに手放してしまう 「やらずに後悔するよりやって後悔したほうがいい」手垢のついた…

夢なんてない方がいい

夢なんてない方がいい叶うと心から信じられるならばそれを夢見る必要はなくそれはすでに夢ではないのだし 夢が何もなければそれが叶わないという苦しみもない何の夢もないことがいちばん素晴らしい 夢や希望といった言葉に膠のようについて離れない偽善と嘘…

頑張らないことを頑張る

頑張らないことを頑張ってきたできないことや頑張れなかったことを諦めるということを学んできた手放すということを学んできた逃げ出してしまうということから逃げ出さなかった 頑張ることを生きる目的として頑張ったことで自分を認めたい人々と私自身を比較…

青い悲しみの気配

どこか東欧の古い街並みにいる。近未来的な、どこまでも冷ややかで無機質な建造物に混じり、数百年の息吹を感じさせる古い建物が林立している。秩序の消えたその街で、オリンピックのような大規模な競技大会が催される。 私は、想いを寄せる男性と一緒に観戦…

命のための祈り

『食堂かたつむり』 小川糸 著 読了した。 食べるということは生きるということ。自分以外の命をいただくことによって、私達は生かされている。命というものの持つ価値、生きることへの讃歌。この物語は最高の食育となり、命とは何たるかを教えてくれる最高…

聖域を守る

心に健全な壁を作っている人ほど壁がなく心を開け広げているように見えるのでは?本当は逆なんだ私みたいに 人と接すると花壇に土足で踏み込まれるように感じる人ほど健全な壁を持って自分をきちんと守れていないんだ 人との間に壁を作るのは良くないことだ …

淡い水色のシャツ

CDのジャケットは、黒いキャンバスの上、赤や黄色や、蛍光ピンクの絵の具が舞い踊る絵画。自我を廃して、神の意志の通り道となり、色彩を鏤めたオートマティック・ペインティングのようなものだった。 ケースからCDを取り出し、恐る恐る再生する。音声はくぐ…

いびつな像

憂鬱になるのは 魂の真実とかけ離れたことを考えただけ幸せになるのは 魂の真実と響き合うことを考えただけたったそれだけのこと 感情も気分も 思考から始まり 思考から生まれる思考とは自分の心のスクリーンに何かを映しているだけで決して 絶対の真実では…

シュールな自虐ネタ

『ほえる犬は噛まない』ポン・ジュノ監督の長編デビュー作。ポン・ジュノ監督は初期の作品が好きかも。『殺人の追憶』もとても好みだったし、最近の、評価の高い『パラサイト〜半地下の家族』とかよりむしろ良いんじゃない? このデビュー作も、細かいエピソ…

テイクバック

人に判ってもらえない 誤解されるという孤独な現実を創り出すのは大切な誰かに対し あの人とだけは通じているという強烈な歓びを感じたいから大多数とうまく交流できないのは限られた人と深く交わることの歓びをより感じたいから禁忌を犯すことでより高い高…

椅子取りゲーム

通っていた高校の最寄りのH駅に向けて、自転車を漕いでいる。駅前はしばらく見ないうちに、特殊な変異を遂げた生物のように見ず知らずのものに変貌していた。ひしめき合う原色と幾何学の洪水。熱を帯びた人いきれと喧騒。あらゆるエネルギーが不自然に圧縮…

神は支配しない

『エクス・マキナ』 アレックス・ガーランド監督。第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作品。 アンビエント調の音楽と、選りすぐられた視覚効果との影響で、だんだん意識が麻痺してくる感覚。主人公と同じく、自分が本当に人間だったかどうかが疑わしくなって…

世界の秘密の鍵

「信じたいことを信じたまま死んじゃえば、それが私の真実になる」旧いサイトのプロフィールに、座右の銘としてこんな言葉を載せた。死を祈念しているようなニュアンスを与えてしまうような気がして、後に変更した。「信じたいことを信じたまま生き抜けば、…

双子の相剋

双子の兄は、優秀ではあるが屈折し、心の闇に支配され、その支配を外界に投影しようと生きる。双子の弟は、自由奔放で、渓谷を吹き渡る風のような清々しさを持つ。兄は徒党を組み、自らの生み出すルールや不文律に絶対忠誠を求める。それに背く者やはみ出る…

溶けたノートパソコン

愛用のMacBookに向かって、何か夢中で作業している時に、父にしつこく話しかけられて苛立つ。半分無視してあしらった。父は腹を立てたのか、私のMacBookを絨毯の上に置いた。絨毯はみるみる色を変え、銀色に輝き始める。しだいに境目は曖昧になり、環境に溶…

復讐と感謝

私は父に復讐したかったされた分だけ返してやりたい苦しめてやりたいと感じていただから父に苛立つような出来事を掬い上げてその機会を窺っていたその機会に思う存分遣り込めたいと願っていた 決して父の言動に「苦しめられ」ているのではなく復讐の機会をみ…

原色の愚者

私と恋人は若く、二十歳くらいに見えた。何も知らないがゆえの豪胆さがあり、怖いもの知らずで、シンプルに未来の輝きを信じている。タロットの愚者のカードのように思えた。私たちは、カラフルな原色を重ね合わせたピエロのような服装で、特に鮮やかな黄色…

相談者

二十歳くらいのの若い女性に相談を受ける。資格か何かの勉強をしなくてはいけなくて、朝方まで机に向かって頑張っているのに結果が出せないと言う。 何時間机に向かったから凄いんだと、時間だけで判断していませんか? 音楽を聞きながらとか、ラジオを聞き…

漂白された闇

真っ白で艷やかな床が一面続いていて、その上に、寸分狂わず並べられたナイフやフォークのように、人々が並んで横になっている。その展開図は限りなく続いているかに見える。壁も天井も白く、白過ぎて、それが壁なのかどうかわからない。壁という概念や言葉…