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双子の相剋

双子の兄は、優秀ではあるが屈折し、心の闇に支配され、その支配を外界に投影しようと生きる。双子の弟は、自由奔放で、渓谷を吹き渡る風のような清々しさを持つ。
兄は徒党を組み、自らの生み出すルールや不文律に絶対忠誠を求める。それに背く者やはみ出る者は容赦なく断罪する。平屋の屋根の上にたくさん集まった彼らは、たったひとりで立ち向かう弟ににじり寄る。
時代背景は明らかに現代ではないけれど、それほど遠い過去でもないように感じられた。これが映画の中の出来事なのか、現実なのかも、よくわからなかった。

双子の幼少期。一緒に生まれた双生児というのに、二人は何もかも対照的だった。弟はすくすくと芽吹いたのに対し、兄は一回りも体が小さく、体も弱く病気がちだった。その代わり、兄は学業成績に秀で、それに期待をかけ、自らのコンプレックスを二重写しにした父は、兄を格別に溺愛した。
何をするにも兄が優先され、弟は添え物のように、誰にも顧みられることがなかった。

弟は、傷ついた幹を自らの樹液で癒やして大樹となった。そうする他に生きる術がなかった。
孤独は彼を傷つけもしたが、伸びやかさを守る働きもした。木立に差し込む冬の太陽のような眼差しは、穢されることがなかった。
兄は、過度な期待という重圧に魂を押しつぶされ、歪められた眼差しで世界を見つめるしか無かった。誰に対しても高慢で、他者に劣等感を与えることで自分の優位性を示した。それは常に、完璧に道徳的な仮面の下で行われたので、表向きには、絵に描いたような品行方正な優等生として映った。父の顔色が彼の全ての判断基準だった。

血を分けたふたつの眼光が、藁葺の屋根の上で、真っ向から火花を散らす。大勢を引き連れた兄に対し、一人きりで臨む弟。多勢に無勢にも関わらず、誰の目にも勝敗は明らかであるように感じられる。弟の目には、迷いが無い。彼の根は大地の奥深くまで心置きなく張り巡り、彼の叫びは天球を震わす。


たぶん、兄弟は、両方とも私自身なんだろう。