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Dépôt de Météorites

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

原色の愚者

私と恋人は若く、二十歳くらいに見えた。何も知らないがゆえの豪胆さがあり、怖いもの知らずで、シンプルに未来の輝きを信じている。タロットの愚者のカードのように思えた。私たちは、カラフルな原色を重ね合わせたピエロのような服装で、特に鮮やかな黄色…

相談者

二十歳くらいのの若い女性に相談を受ける。資格か何かの勉強をしなくてはいけなくて、朝方まで机に向かって頑張っているのに結果が出せないと言う。 何時間机に向かったから凄いんだと、時間だけで判断していませんか? 音楽を聞きながらとか、ラジオを聞き…

漂白された闇

真っ白で艷やかな床が一面続いていて、その上に、寸分狂わず並べられたナイフやフォークのように、人々が並んで横になっている。その展開図は限りなく続いているかに見える。壁も天井も白く、白過ぎて、それが壁なのかどうかわからない。壁という概念や言葉…

恥の効用

たくさん恥をかけばかくほど 私は自由になる失敗すればするほど それを許せるようになる恥をかくことは なんて素晴らしい恵みなんだろう できないことや下手なことをチャームボイントと捉え魅力に変えるのか恥ずかしくて消し去りたいものと捉えるのか選択す…

スピリチュアルマガジン

届いたメールマガジンにこんな内容が書かれていた。……◯◯さんがずっと畏れてきた存在が、光の橋を越えて、体を脱ぎ棄てていかれました。(確かにこの「畏」れるという字が使われていて、それが妙に引っかかった)◯◯さんは、虚脱感と開放感、そして喪失感に翻…

雨音の独白

インクの切れた万年筆で手紙をしたためました埃を被った灯りの下でぼんやりと太陽の亡霊が揺れましたペンのキャップを閉めたなら明日のスープを煮つめるのです錆を落とすために握りしめた右手が痺れます長い長い晩春の雨流れる雫を数えます喉に絡みつく飽和…

生命のスパーク

『タイタニック』 誰もが知る言わずもがなの超大作。地上波で放映していたので観た。たしか公開後しばらくした頃に一度観たきりで、細かいところは殆ど忘れていた。 彼は彼女に言う。君は何人も子供を生んだ後、この冷たい海ではなく、温かいベッドて最期を…

目に見えない爆弾

数分後に、原子爆弾が落ちることがわかっていた。私たちはできるだけ頑丈なビルに駆け込んで、じっと息を潜める。眼の潰れるような閃光、耳をつんざく轟音、そういったものを想像していたけれど、具体的な光や音は、何も検知されなかった。目に映る世界は何…

足りないものを数える悪癖

常に100点から引き算をしていた98点でも なぜあと2点が取れなかったのだと強く叱責された子供の頃の記憶がまだ 私の中では生き続けていて 何ができるようになったかではなく何がまだできないでいるかを常に考えてしまう癖 完璧になるために何が足りないか完…

日常の魔法

『八月のクリスマス』 1998年の韓国映画を観た。ハン・ソッキュ、シム・ウナ主演。 盛り場のトイレの鏡の前で、突然姿を消した彼を想い、涙を流し、鼻をかむシーンが印象的。日常のなんでもないようなシーンが降り積もり、それが次第に輝く宝石となっていく…

ウズモレル

情報に埋もれると窒息する何もない場所に埋もれていたい柔らかい眠りに揺られていたい無数の塵が沈殿するのを見つめていたい 光が瞼を透かして囁いてくるのを感じたい風が肌の上で遊ぶのを感じたい時がまろやかに軋む音に耳を澄ませていたい鼓動のなかにある…