SITE MÉTÉORIQUE

Dépôt de Météorites

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

アルターエゴ

巨きな帆立貝のような二枚貝があり、私はその頑なに閉ざされた口をこじ開けようとした。ボッティチェッリの絵画でヴィーナスが乗っているみたいな貝。その中には、裸の男性が、胎児のように丸くなって入っている。何故だかそのことをあらかじめ知っていた。…

内臓を直視する

『哭声/コクソン』 ナ・ホンジン監督作品。映像文化に於いて、韓国は世界最高峰に位置することは間違いないと確信させられる作品。でもとにかく血みどろ、目や耳を覆いたくなるような場面の連続で、精神が悲鳴をあげた。二度ほど途中で諦めようとしたけれど…

純白の島をリポートする

かつてのスペイン風邪という名称のように、今回の〇〇風邪の名称のもととなった〇〇島はどの位置にあるでしょうか。三択でお答えください。緯度30度、緯度55度、緯度65度。正解は緯度65度。その島は南アメリカ大陸の南端に、おまけのようにくっつく…

隣のコロちゃん

私が中学に上がったばかりの頃、隣の家で柴犬を飼っていた。コロちゃんは無駄吠えすることもない、とてもおとなしい女の子だった。隣家のお父さんはかなりの亭主関白で、奥さんに対し怒鳴り散らす声が頻繁に聞こえてきた。その怖いお父さんが、コロちゃんに…

下り坂で見つけた花

『エターナル』 イ・ビョンホン主演の韓国映画を観た。 「下りるときにはよく見えた 上るときには見えなかったその花」得ようとする行為は、結果何かを失うという現実をもたらすだけ。それに気づくのは必ず、何かを失ってから。そして、究極的には、何も失っ…

マイペース

ずいぶん長い間、自己啓発とかスピリチュアル、心の不調に関する内容を除き、ほとんど本を読めなかったので、読むという行為がとても疲れるし、休み休み、ゆっくりしか読めなくなっている。もともとたくさん読む方ではなかったけれど。多読な人から見たら亀…

幻聴

『あの人に逢えるまで』 半時間ほどの短いフィルム。南北離散家族をテーマにした韓国映画。とてもきれいで優しい映画だった。こういうのがもっと観たいのに意外とない。「シュリ」「ブラザーフッド」のカン・ジェギュ監督作品。 何十年もひとりの人を心の中…

夕焼けのなかの幻影

夕焼けの西の空たかく、つづら折りの道が伸びていて、その先に涅槃の国がある。涅槃という概念は当時の私にはなかったけれど、感覚的に捉えていたものを言葉に変換するなら、そう表現するのが正しいと思う。 幼い頃に、圧倒的な夕焼けの燃え盛るようなだいだ…

赤い夢

憶えているいちばん古い夢はなんだろうと考えてみると、小学三年のときに見た、血尿が出る夢に思い当たる。いつものように用を足すと、白い便器の中が真っ赤に染まっている。その赤い色があまりにも濃度が高く鮮やかで、見つめているとそのなかに眩暈ととも…

元気をもらう

活躍するアスリートなどを見て、よく「元気をもらった」とか「勇気をもらった」という人がいるけれど、私にはそれが全く理解できなかった。そういう自分がどこかおかしいのではないか、何かが欠けているのではないかと、疑っていた。どうしたら元気をもらっ…

嗚咽

ベッドに横たわり、彼に背を向けて、泣いていた。泣くというよりも、何かが溢れてしまい吐き出すしかない。嗚咽というよりも、魂が作動する機械音のようで、自分でも見知らぬ、どこか生命とは遠い場所で歯車が軋むような音だった。彼が戸惑っているのはわか…

強くなること

世の中の荒波を越えてひとつずつ鍛えられ強くなる そんなよくある美談 強くなることは 鈍感になること強くなるということは 繊細な感受性を失うこと 弱いままでは 感じやすいままでは 生きづらいだから感受性を自ら削り取っていくそれを「慣れる」こと「成長…

アセンションの意味

今生きるこの世界が 苦しみも悲しみもない美しい世界になって苦痛が終わることを待ち望んでいたけれど世界が混沌としたままで 何ひとつ変わらなくてもそのなかにあって苦しみも悲しみも知ったうえで苦しみも悲しみも味わうこと無く生きられるようになること…

理科教師

朝七時過ぎに起きなければならない。でも起きられない。七時半くらいから放映されるドラマがあり、俳優Cが主演している。私はそれを見たかった。起きなければと思っているうち数十分眠ってしまい、気づくと八時過ぎだった。重い体を引き摺って起き出す。ド…

引き寄せる

私が何かを引き寄せるのではなく何かが私に引き寄せられてくるんだ 引き寄せようとして引き寄せられるものはないあっても偽物ばかり何も必要ないからこそ 私が幸せを引き寄せるのではなく幸せが私を引き寄せるそういうことなのかな

虚像

『ルウベンスの偽画』 堀辰雄先日読んだ「風立ちぬ」が琴線に触れたので、こちらも読んでみた。 意中の人を本当に愛しているのか、自分の観念の理想像をそこへ投影しているだけなのか。その迷いは必ず恋というものに付随するのではないかと思う。観念の中の…

ケーブルカー乗り場

枯れた芝生のような、踏みしだかれた草に覆われた空き地が続いていた。片側は崖、片側は民家が並んでいて、その隙間に細く続く空き地は、K貝塚へと続く(実在しない)抜け道だった。私は母と一緒にその抜け道を歩く。母は、若々しいワインレッドのダウンジ…

雨の匂いの覚醒め

雨の降り始めの 清々しい匂い緑の木々や 草たちが 一斉に安堵の溜め息をついたような胸の奥が すっ とする美しいその香り ぽつりぽつりと語りかけるように 天から落ちる雨粒たち次第に心を開き 秘めてきた想いを溢れさせるように彼らは大地へと 愛を届ける …

幸福という痛み

『風立ちぬ』 堀辰雄 読了した。遠い昔に読んだような読まなかったような。殆ど覚えていないので初読と言ってよかった。 この作品は、生と死の意味を問う作品とされているようだけれど、それ以上に、私にはこれは恋愛の小説、しかもある意味で一方通行の愛を…

空飛ぶ自転車

私たちは、大きく弧を描く形に整列した。その三日月型のパズルが揃うための最後のピースとなったのは私で、そのために教師に目をつけられたのか、いちばんはじめに指名された。北海道のような寒冷地で、イヤホンは機能を失うのかどうかと尋ねられた。私は答…

宇宙の脈打つ音

毛細血管が 身体の輪郭を超えて 空間に伸びていく私とそれ以外を隔てる境界は 限りなく透明に近づいていく 大地に根を張るように 網の目のように細かく私の血管が地球のなかへと伸びていく地球のエナジーが私のなかに流れ込み 対流する 世界の総ての粒子のな…

生霊の血潮

身体をとび出して 魂だけが彷徨う身体と 心と 魂の輪郭が 僅かにずれたまま乱視の瞳で見つめる世界何重の可能性が見える 美しい幻視に酔う幾つもの世界に 同時に存在する此処にいながら 在りたい場所にも存在する 霊となってまで 貴方のそばに在りたいそれは…

目標を持たない

目標を持ってそれを達成し、また次の目標を掲げる。高すぎる目標でなく、今できる少しだけ先にあるものを目指し、一歩ずつ進んでいけば、やがて大きな山にも登ることができる。人はよくそう言うけれど、肌感覚で納得できない多くのことと同じように、これも…

モルダバイトのピアス

モルダバイトのピアスを買った。かなり大きな丸いモルダバイトのまわりに、透明な小さな石が散りばめられている、太陽か、ひまわりを思わせるような形。深いグリーンが稀に見る美しい色だった。20万と端数という結構な値段にもかかわらず、私は何故か購入を…

渡し船

彼は船頭だった。木造の粗末な渡し船で、河の対岸へと客を渡す。はにかんだ笑顔。船を係留するロープを大切そうに束ね、命あるものを扱うかのように、優しい眼差しで見つめる。何気ない所作に、彼だけに固有の光が宿り、さらさらとその美しさが降り積もる音…

お花畑

「脳内がお花畑」って揶揄する言葉が昨今よく聞かれるけれど脳内が戦場 脳内が廃墟 脳内がゴミ処理場であるよりは全然いいじゃない 脳内をお花畑で満たしたら お花畑のような未来を創れる脳内を戦場にすれば 戦場のような未来が来る戦場に生きたい人は そこ…

未亡人

愛する人に先立たれて、心から絶望しました。生きる希望を完全に見失い、何度後を追おうと思ったかしれません。それでも生きないといけないと思いました。そうしないと、あの人に怒られると思ったからです。これから新しい出会いがあれば、すぐにでもその人…

前世への旅

初めて訪れた場所なのに、ずっと前からそこを知っていたような気がする。鮮やかな既視感。生まれ育った国よりも奇妙なほど親近感を覚え、どこの路地を曲がってみても、懐かしいような気持ちが湧き上がるのを抑えられない。パリのセーヌ右岸、モンマルトルの…

ブレーキを踏む

強くブレーキペダルを踏み込む。全身の力を右足に込めてぐっと踏んでいるのに、車にそれがうまく伝わっていない感じがする。車はするすると進み、前方の車すれすれでようやく止まった。ほっと胸を撫でおろす間もなく、信号が青になる。東インターチェンジ付…