SITE MÉTÉORIQUE

Dépôt de Météorites

漂白された闇

真っ白で艷やかな床が一面続いていて、その上に、寸分狂わず並べられたナイフやフォークのように、人々が並んで横になっている。その展開図は限りなく続いているかに見える。壁も天井も白く、白過ぎて、それが壁なのかどうかわからない。壁という概念や言葉…

スピリチュアルマガジン

届いたメールマガジンにこんな内容が書かれていた。……◯◯さんがずっと畏れてきた存在が、光の橋を越えて、体を脱ぎ棄てていかれました。(確かにこの「畏」れるという字が使われていて、それが妙に引っかかった)◯◯さんは、虚脱感と開放感、そして喪失感に翻…

目に見えない爆弾

数分後に、原子爆弾が落ちることがわかっていた。私たちはできるだけ頑丈なビルに駆け込んで、じっと息を潜める。眼の潰れるような閃光、耳をつんざく轟音、そういったものを想像していたけれど、具体的な光や音は、何も検知されなかった。目に映る世界は何…

スパイ養成所

青春グラフィティ的な群像劇。主人公の二人の男子は、何らかの養成所に入所する。そこは表向きは何の変哲もない、どこにでもある専門学校のようだったけれど、内実は、諜報機関の要員を育成するという裏の顔がある。敵地に潜入捜査員として紛れ込むために、…

干涸びた水路

すれ違う若い女性たちや、十代くらいの少年たちの会話が、風に途切れ、断片的に耳に届く。ちぎれた便箋を寄せ集め、コラージュするように意識の中で繋げていく。若者たちの会話は、私自身の人生の中、どこかしらで実体験してきた思いの断片であり、色とりど…

ひび割れた指

理科室のような、黒いテーブルと背もたれのない椅子が規則的に並べられた空間で、雑巾を手にしている。床にはなぜか、毛足のとても長い絨毯が敷かれていた。大勢に踏みしめられて、毛足は潰れ、ぺしゃんこに固まっている。そこへ、丁寧に雑巾がけをしていく…

致命的な失言

階段の上に岡村さんがいて、階段の下に田島さんがいた。私は階上の岡村さんに向けて、「田島さんがお越しです。岡村さんをお探しですよ!」と言うべきところを、「岡村さんがお越しです。田島さんをお探しですよ!」と、うっかり名前を反対に言ってしまった…

時を超えた郵便物

自宅の郵便受けを開けると、幾つかの郵便物と一緒に、何やら大きな包みが入っていた。包装を解いてみると、数枚の皿が現れた。自宅で頻繁に使っている、桜の柄がワンポイントで入った平たい皿と全く同じデザインで、花の色が橙色で描かれた色違いの皿だった…

踊る花のオブジェ

中華料理店から出前が届く。2人前のチャーハンと餃子は、まるで宮廷料理のように細かい細工で飾り立てられ、高級感が漂っていて驚く。これ、どこから取ったっけ? 母に訊くと、大通りに出たところのパン屋さんの先にある店と答える。そんなところに中華料理…

因果律

まだ薄暗い早朝、校舎の階段を上っていた。煤けたコンクリートの灰色だけに支配された、廃墟のような空間。階段の途中には、新聞紙が散乱して行く手を阻んでいる。折り畳まれた大量の古新聞に混じり、スナック菓子やウエットティッシュの袋も散乱していた。…

演技派女優

ドラマのセットは、ちょっとしたアスレチックか何かのようで、一軒の家の内部に、緩い螺旋を描く滑り台のようなものがあったり、ボルダリングの壁のようなものがあったり、複雑に込み入って、目眩がするほど派手な原色が散りばめられた内装となっていた。私…

ミッシングレター

音楽室で、多くの児童と一緒に歌を歌っている。小学校の音楽の時間らしい。アルファベットの歌を歌っていたので、英語の時間だったのかもしれない。ABCDEFG〜と歌おうとするのだけれど、その続きが所々どうしても思い出せない。記憶が部分的に黒塗りされてし…

与えられた名前

私は赤ちゃんを産んだ。正確には私のお腹から産んだわけではないのだけれど、どこからともなく降ってきたように私の手に授けられている。そして確かに私の子であることが分かっている。 あなたの名前は何なの? 私は赤ちゃんに問いかけた。赤ちゃんは「ヒロ…

滑降

山あいの清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。辺りは新緑の他に何も目に付くものがない。自転車にまたがり、急な坂道の上にいる。これから、ここを滑り下りるのだ。なぜだか不安が過る。ブレーキはきゅっと握りしめれば手応えがあり、きちんと車輪の回転を…

靴の片方

駅前の暗い夜道を歩く。霧雨が降っていて視界が悪く、ねっとりとした湿気が世界中をゼリーの中に閉じ込めたかのよう。変則的な形の横断歩道。アスファルトの上の白線が辛うじて視認できる。渡ろうとしてそれが横断歩道でなかったことに気づく。信号が変わっ…

宇宙の朝

階段を、目を閉じて上っていく。闇の中を手探りで、ゆっくりと一段ずつを噛みしめる。上り切り、目を開くと、自分の部屋が整然とした美しいものに変わっていた。ベッドの向きが違い、鮮やかなフクシアピンク色でペイズリーのような模様が描かれた、真新しい…

ブルージーな煮豆

夢の中で、こんなドラマを観た。国内の少し古いドラマのテイストだった。主人公の若い女性が、書店でベストセラーを見繕う。彼女は自分の少々風変わりな個性を封印して、社会に認められる存在になろうと思い詰めている。いま世間で流行っているもの、世間が…

黄金の部屋

陽だまりで、愛犬のネルと戯れていた。南の空低く太陽が横切り、ガラス越しに長い影が伸びている。板張りの床の上、影が踊るのを見つめる。ポメラニアンのネルはベージュ色の毛色だったけれど、陽光に細くふわふわした毛の一本一本が煌めいて、黄金でできた…

深夜の壁掛け時計とブルーベリー

突然、母に起こされる。3時半だよ! 遠慮のない大声に目が醒める。幼い子供のような、思慮の痕跡が全く感じられない率直な声だった。母からそんな声が聞かれることは初めてのような気がした。深夜の3時半。外界は静かな闇に覆われている。引き替えに部屋の中…

ファミレス神天戸店

不思議なテレビCMが流れていた。何の宣伝かわからないけれど、車の運転席から見える光景を、ひたすら淡々と映し続けているものだった。赤信号で減速し、止まる。横断歩道を渡っていく子供たち。発進すると緑の並木道に差し掛かる。右折する際、待てども待て…

アクセスの多い記事

何気なくブログのアクセス解析を見ると、1日だけ飛び抜けてアクセスの多い日がある。グラフの中に一本だけ突出した線。普段の100倍以上もアクセスがあるので、驚いて画面を二度見した。どの記事だろうと見てみると、アクセスの多かった理由がわかった。 …

絡まり合う蔓

とある外国人の男性と出会う。お互いに、相手の国の言葉は片言しかわからない。通常なら身振り手振りでなんとか意思疎通しようと張り切ったり、なんらかの意図がそこに働くはずの状況で、不思議なほど思考は静かだった。私は何も働きかけず、ただ受容してい…

受胎告知

受胎告知をテーマにした絵画を解説するウェブページを作っている。見覚えのない真新しいモニターの前で、レイアウトを考え、どこに絵を配置するか、どう文章化するか、見出しの文句は何にするかなどを考えつつ、淡々と仕事をする。 そこに自分自身の想いは欠…

スキピオクッキー

料理番組で、女優とコンビ芸人が、テーマに沿った作品作りに挑戦する。今日のテーマは、世界史の登場人物をお菓子で表現するというもの。 お笑いコンビは、何やらギザギザした球体のクッキーを焼き上げ、両腕で抱えるようにオーブンから慎重に取り出した。女…

狂っているのは誰

朝起きると、外は薄暗く、時間の感覚が麻痺している。朝なのか夜なのか全くわからない。それでも目覚めたということは高校に行かなければいけない、それだけがはっきりとわかっている。夢の続きを無理やり継ぎ接ぎしては、布団の中でまどろんでいた。けれど…

究極のハーモニー

キリンジが解散するとの情報が流れている。新しいメンバーを募集していて、入れたらいいのにと勝手な妄想をする。次の瞬間、私はすでにメンバーに応募していて、スタジオで面接の順番を待っていた。 隣にあるガラス張りのブースから、キリンジの二人が歌って…

息もできないほどの退屈

ビルの一階ロビーで人を待つ。誰かと一緒に朝早くここへやってきて、その誰かの用事が済むまでここで待っている。昼下がり、ガラス張りで通りから中がよく見えるそのロビーの片隅で、白い小さなソファに座り、退屈しのぎにテレビを見ている。テレビは高い位…

前下がりのボブ

自分の長い髪が鬱陶しく感じ、どことなく野暮ったく幼児性を持つように感じられ、突然切ってしまいたくなる。ばっさりと顎下のラインで切り揃えたボブカットにする。前下がりのラインがシャープで、なかなかスタイリッシュにカットできたと感じ、珍しく満足…

猫音

ご近所の猫タローちゃんが、いつもの散歩コースである我が家の庭を通りかかる。それに気づいた私は、喜んでいそいそと窓辺に近づく。猫と目が合った。しばらくじっとこちらを見つめたあと、猫は、にゃおおーん、と長く引き摺るような鳴き方をした。どこか不…

歯科医のプロフィール

いつもの歯科医院に行くと、担当の先生が変わっていた。初めて見る歯科医は、還暦手前、白髪交じりで、ひどく痩せていた。顔には深い皺が刻まれて、年輪を感じさせる容貌ながら、どことなく頼り甲斐のない感じがした。 歯のチェックを一通り終えて、歯科医は…