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黄金の部屋

陽だまりで、愛犬のネルと戯れていた。南の空低く太陽が横切り、ガラス越しに長い影が伸びている。板張りの床の上、影が踊るのを見つめる。ポメラニアンのネルはベージュ色の毛色だったけれど、陽光に細くふわふわした毛の一本一本が煌めいて、黄金でできた極細の糸のようだった。

黒曜石のような瞳が見つめている。マミー、何か忘れていませんか? そんな訴えが意識に直接聞こえてくる。そうだった、ご飯を出すのを長い間忘れていた。どれほど長い間忘れていたんだろう。納戸部屋に入り、奥の方からドッグフードの袋を引っ張り出した。
かつてネルが愛用していた、懐かしいステンレスの器にフードを出してやると、喜んで顔を突っ込んだ。夢中で食べているネルの被毛が、体が揺れるたびにまた光の中で輝く。ご飯をあげたのは何年ぶりだろうと、ふと考えた。ネルが天国に召されてもう数年経つことに、はたと気づいた。

この陽だまりの部屋は天国なの? 妄想の世界なの? ここを離れ、現実に戻らなければならないのだろうか。果たして現実とはなんだったんだろう。次第に曖昧になり、自分がどこに居るのかわからなくなった。現実というものが基軸を失い、柔らかな粘土で形成されたようなものに感じられる。指一本で捻じ曲げられる、可塑性の高いただの物質。

今居るこの部屋が本物の真実であり、日々の現実の方こそがうたかたの夢であることに、深く気づいた。心の奥に静かな雷槌が走った。毎朝目覚めると、かりそめの世界へと出勤していくのだ。歪んだ眼鏡をかけながら。