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香りの轟音

近年、家に出入りする業者さん、ガス屋さんとか、電気屋さん、工務店の方など、皆申し合わせたように同じような香りの香水を付けている気がする。メンズ仕様の、柑橘メインでややシガーっぽい苦味のある、よくある香り。
お帰りになった後も、換気しても一時間位は部屋に漂い続ける。汗臭かったりしないようにという配慮なのはわかるけれど、ほとんど化学物質過敏症の私には、ああいう香りがとても苦手で。


市販の洗剤や柔軟剤もほとんど使えない。香りの轟音に聞こえる。鼻の奥が痛くなり、頭が痛くなり、吐き気がしたり、自律神経が乱れて何時間もそれを引きずる。近頃はますます市販品の香りが強くなり、ご近所で干している洗濯物の香りでさえ強烈に感じることがある。昔はここまで強くなかった気がするんだけど。
電車に乗っていて、隣の人の香りに耐えられなくて途中で降りたことも幾度もあった。


少数派のあなたが社会に合わせてください。そう言われるのには慣れているし、多数決なら仕方ないのかもしれないけれど。
香りは大声で叫ぶものではなく、囁くものであってほしい。


嗅覚は、いちばん第六感に近い感覚だと思う。理屈を超えた直感や、インスピレーションの在り処に一番近い場所にあるように思う。
轟音に慣れてしまえば、細やかな囁きは当然耳に入らなくなる。生きるのは楽になるだろうけれど、感覚を麻痺させていくことは考えられない。自分の魂ごと変質させてしまい、二度と元へ戻れないような生理的恐怖を感じる。


繊細すぎる人間が生きやすい社会であってほしいけれど、それ以前に整えるのは自らの心の方。
自分を「めんどくさい人」と片付けたりしないで。自分であることを心から誇りに思えるようになること。