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自分を演技する

韓国ドラマ『エージェントなお仕事』 Netflixにて視聴。
この頃、感想カテゴリはNetflixのドラマばかりになってしまっているな。人をダメにする配信動画。

俳優のマネージメントをする会社が舞台。マネージャーたちは、自分と会社の都合で相手に嘘をつき、騙しては振り回す。いけ好かない奴らだけれど、人間臭く憎めない。スーパーヒーロー的な主人公もいないし、高潔な人物もいない。みんな俗物なのだけれど、俳優たちのために自分の私生活も犠牲にして奔走する、その献身ぶりは愛すべき。キャラクターがものすごく個性的で魅力的で、絶妙に配置されてる。

ドタバタになりすぎず、シリアスにも寄らず、塩梅がいい感じ。内面に弱さや脆さを抱えつつ、強気で世間と渡り合っていく彼らの表と裏。オフィシャルとプライベートの表情が入れ替わり、それぞれの思惑が見事にすれ違うさまが、ちょっぴり滑稽だったり、悲喜こもごも。酸っぱかったり苦かったり、甘かったり、フルコースのB級グルメを堪能した感覚。

俳優たちが自分自身の役で出演していて、自分というキャラクターを演技するという構造がやっぱり面白い。もちろん脚本家が描いたイメージに則ったもので、自分の虚像を演じることになるのだろうけど、どこまで本当の素顔なのか、全てが虚像なのか、そこがわからないので興味をそそられる。華やかな芸能界の見えない部分、月の裏側を覗き見ているような感覚は、ミーハー的な好奇心をそそるけど、それも嫌いじゃないかも。

自分を演じるというのは、どんな気分なんだろう。自分ってこう思われているのか!というような驚きや違和感や嫌悪感もあるだろうけど、だったらいっそ徹底的に羽目を外した自分像を作り出して、面白がってやれ…って思うんじゃないか。他人も自分も騙くらかして楽しんじゃえ!って。
それは演技することだけじゃない。普段の生活だって、私たちはみんな自分像を演じている。私はこういうキャラクターですから、というのは、それが一番演じ慣れていて演じるのが楽なキャラクターだということ。

疲れていると慣れたことばかりやってしまうので、演じ慣れたキャラばかりになりやすい。たまには慣れていない、ぶっ飛んだ自分を演じてみるのもいい。そうすると、自分の性格ってなんだろう、自分らしさってなんだろう?と解らなくなる。それがチャンスなんじゃないか。自分らしさの認識が薄れれば薄れるほど、多分自分らしさは凝縮されて際立ってくる。そういう逆説。

性格を変えたいと躍起になったって変えられるものではない。でも、その性格が本当に自分のものかどうか疑って、少しだけおちょくってみたら目線が変わる。きっとそうだと思う。