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踊る花のオブジェ

中華料理店から出前が届く。2人前のチャーハンと餃子は、まるで宮廷料理のように細かい細工で飾り立てられ、高級感が漂っていて驚く。これ、どこから取ったっけ? 母に訊くと、大通りに出たところのパン屋さんの先にある店と答える。そんなところに中華料理店があったのを思い出せない。赤い外装の店構えは記憶にあり、○○軒と白い字で書かれていたのはぼんやりと覚えている。
早速食べてみる。本格的過ぎて、取り澄ました味。日本人好みにアレンジされていない、本場の味はこんななのかな? 母と話しながら食べるけれど、二人とも箸が進まない。

テレビから、お世話になった中華料理店に、日頃の感謝を込めてお礼をしたという高校生の美談が流れてくる。
その男子高校生は、昔あったフラワーロックというおもちゃに似た、花が踊る仕掛けをプログラミングしたという。頭の部分は黄色い水仙のような花で、体はリアルな人間の体の形状をしていた。スリムでスタイルのよい男性の体に真っ黒なタイツを着せたような感じ。音楽に反応して、韓国のボーイズグループみたいにキレの良いダンスを始めた。どの音に反応してどんな動きをさせるか、とても苦労したと高校生は語った。
高校生がお世話になったという中華料理店は、いつも閑古鳥が鳴いていて、この花のオブジェが集客の助けになればいいと思ってプレゼントすることにしたと、彼は素直な瞳をして語っていた。この踊る花のおかげで沢山の人が集まり、古びて地味だった中華料理店は、連日の大盛況だそうだ。

そんな都合のいい話があるかい。私は冷めた目で画面を見ていた。踊る花の開発経過までテレビの取材が入っているのに、明らかなヤラセじゃないの? どこかわざとらしい美談に生理的嫌悪感を感じる自分は、心根がねじ曲がっているのだろうか? いや、直観力や洞察力が優れているだけだよ。内側で二つの声が揉め続ける。