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二度目の卒業

ラジオから新進気鋭のバンドの紹介。ラジオなんだけどなぜか映像も配信されており、次々に新しいバンドの音楽がワンフレーズ、そして彼らの日常生活の一コマや、応援している友人やファンなどの声が手短に紹介される。
紹介リストには聞いたことのない何十組のバンド名がずらりと並んでいて、小さすぎて読みにくい。番組パーソナリティーが発掘してきたバンド達なのだとか。

パーソナリティーは古舘伊知郎のごとく饒舌で、ティーレックス(有名な日本のバンドらしい)を見つけた音楽評論家◯◯(夢の中では確かに名前があったが忘れてしまった)がどれほど素晴らしかったかを熱弁した。彼がもしティーレックスを見つけていなかったら音楽シーンにおいてどれほどの損失だったか、彼の存在がどれだけ偉大だったかを繰り返し強調する。半生で一度も噛んだことがなさそうなほど滑舌が良い。私は衣類を畳みながら片耳で聞いている。この人、自分もその評論家みたいになりたいわけだ。それがこの活動の意義なわけだな。若く初々しいバンドが日の目を見るためにと語っても、結局は自我の欲望なんだな。熱が空回りして見えてくる。

ベッドの上の山と積まれた衣類をたたみ尽くして、ようやく仕事が終わる。映像のバンドメンバーはまだ高校生くらいの若い子もたくさんいる。サポートしている女の子たちはまるで野球部のマネジャーみたいに素朴で純真そうな子ばかり。
そういえば、私はようやく高校を卒業することができたのだった──ということを、不意に肩を叩かれたように思い出す。一度断念し、おとなになってからもう一度高校に通いだして、それも卒業間近で幾度となく挫折した。今回こそ、とうとう本当に卒業することができたのだった。それは紛れもないことで、称賛してやってもいいことだと何度も自らに言い聞かせる。そうでもしないとまたふわりとその事実が風に舞い、どこかに消えてしまいそうで。

変わり映えせず、いつもの場所でいつものように洗濯物を畳んでいても、私はもう以前の私ではないのだ──ということをいつまでも名残惜しく味わっている。噛み続けて味のしなくなったガムみたいに。

──数え切れないほど見てきた、高校に二度目に通っているシリーズ、初めて卒業することができていた。ちょっとした感慨を覚える。魂の階段を一段昇れた気分。