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蠍座の箱を開ける

十二星座の可愛らしいイラストが描かれたパッケージの、密封されたトレイが十二個。息を殺し、そのうち一つの蓋のフィルムをほんの少し剥がす。何事も起こらなくて安心する。蠍の絵の描かれたものが気になる。もし蠍が出てきたら大変。でもどうしても気になって仕方ない。誘惑に逆らえず、とうとう蠍座のパッケージをちょっぴり剥がしてみる。案の定、中から小さな蠍が数え切れないほどわらわらと這い出してきた。

慌てて殺虫剤を探す。去年だったか、蜘蛛がたくさん出た時に買ってきたスプレーがあったはず。探し当てて、子蠍の大軍に向けて噴射する。蠍たちはその煙を避けて波紋を描くように広がり、よけいに広範囲に散らばってしまう。

私は狂ったようにスプレーをかけ続け、周囲から真ん中へと蠍を追い込もうとする。机の下に逃げ込んだ蠍を燻り出そうと、屈んでスプレーする。燻り出されて現れたのは愛犬のネルで、しかもネルの顔目掛けて真正面からスプレーをかけてしまったことに気づく。ネルは顔をしかめ、激しく瞬きし、くしゃみを連発する。なんてことをしてしまったんだろうと青ざめ、瞬時にあらゆる悪い妄想が意識を走る。しかしネルは何事もなかったように、首を傾げながら私を愛しそうに見上げている。ネルに申し訳なくて胸が締め付けられるように苦しく、それ以上にネルが愛おしく、ただ立ちすくむことしかできない。