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Dépôt de Météorites

復讐と感謝

私は父に復讐したかった
された分だけ返してやりたい苦しめてやりたいと感じていた
だから父に苛立つような出来事を掬い上げてその機会を窺っていた
その機会に思う存分遣り込めたいと願っていた

決して父の言動に「苦しめられ」ているのではなく
復讐の機会をみずから創造しているだけ
私は被害者ではない
その事に気づき 善悪で裁くことなく受け容れる

そのような創造の機会を父の存在が創ってくれた
生きることを難しくし ハードルを上げてくれた
そのことに感謝する

原色の愚者

私と恋人は若く、二十歳くらいに見えた。何も知らないがゆえの豪胆さがあり、怖いもの知らずで、シンプルに未来の輝きを信じている。タロットの愚者のカードのように思えた。私たちは、カラフルな原色を重ね合わせたピエロのような服装で、特に鮮やかな黄色が目を引いた。

銀色のステンレスで出来たカートのような乗り物があり、彼は、それに乗ろうと言った。これに乗れば、空を飛ぶこともできる。私は、それは無理だと言った。二階の窓から飛び出せば、コンクリートの地面に打ち付けられて大破する。

私たちは実際に試してみることにした。二階の窓から空中へと勢いよく飛び出した銀色のカートは、真っ逆さまに地面へと墜落した。けれどカートは無事に着地して、私たちを載せたまま数メートルほど惰性で進んだ。私たちには何の怪我もなかった。カートも無傷で、太陽の下、金属的な光沢を湛えて、破顔一笑するかのように輝いていた。彼の言ったことも私の言ったことも正しかったし、同時に間違っていた。空は飛べなかったけれど、大破もしなかったのだから。

恋人は病院に行き、診察を受けると、認知症だと診断された。黄色い服に身を包んで、無垢に微笑む彼は、その意味を理解していなかった。こんなに若いのに認知症になるなんて。私は悲しかったけれど、悲しんだところで何も変わらないことも分かっていた。
彼が私のことを忘れてしまう日が近い将来やってくる。それまでに、悔いを残さないだけ、思う存分愛されたいと願い、裸の背中に頬をうずめた。

相談者

二十歳くらいのの若い女性に相談を受ける。資格か何かの勉強をしなくてはいけなくて、朝方まで机に向かって頑張っているのに結果が出せないと言う。

何時間机に向かったから凄いんだと、時間だけで判断していませんか? 音楽を聞きながらとか、ラジオを聞きながらとかだったら、集中しているのはほんの一瞬、あとは意識が違う場所へ流れ出しているんです。無駄でしかありません。だったら一時間なら一時間と時間を決め、その間だけ勉強する、あとはすっぱり忘れて遊ぶ、としたほうがずっといいと思います。集中力も才能です。長く続けられる人もいればそうでもない人もいる。自分の才能を知ってそれに合わせたほうが得策です。私はそう答える。

そういう自分はどうなんだと、アドバイスをしている自分自身に言葉がこだまのように返ってくる。偉そうに何を言ってるんだか、何様のつもりだ!全部自分のことだろうが! かなり品のない台詞による罵倒が自分自身に吐きかけられる。相談者なんてどこにもおらず、自分を貶す声だけがそこにあるということに気づく。

漂白された闇

真っ白で艷やかな床が一面続いていて、その上に、寸分狂わず並べられたナイフやフォークのように、人々が並んで横になっている。その展開図は限りなく続いているかに見える。壁も天井も白く、白過ぎて、それが壁なのかどうかわからない。壁という概念や言葉さえ、吸収して真っ白にしてしまう。

寝そべった人々は皆、黒ずくめの服を着ているように感じられる。その真っ白な世界には無しか存在しないので、色も存在できなかったのかもしれない。

その世界で、整頓されて寝そべっているなかの一人の男性に、インタビュアーが話しかける。こんなに密集していて、周りには異性ばかりが寝転がっているのを、どう感じていますか。異性がよりどりみどりなのはどんな気分ですか?

たくさんいて、皆そっくりだと、誰が本当のパートナーだったかわからなくなってしまいそうですが、大丈夫なんです。気配というか、匂いというか、香りというか、そんなようなものを感じることができるので、見紛うことはありません。マイクを向けられた男性は少しだけ首を傾け、無表情のままで、機械的なトーンで答えた。

恥の効用

たくさん恥をかけばかくほど 私は自由になる
失敗すればするほど それを許せるようになる
恥をかくことは なんて素晴らしい恵みなんだろう

できないことや下手なことをチャームボイントと捉え
魅力に変えるのか
恥ずかしくて消し去りたいものと捉えるのか
選択する自由があることを思い出させてくれる