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錦鯉

庭に出ると、世界は白夜のなかに沈んでいる感じがした。ほの暗く白い闇のなかで、自宅のガレージが池になっているのを見つける。池は家の前の道路まで続いていた。塀の上に見知らぬ猫がいる。猫は身構えると、池のなかにぽちゃんと音を立てて飛び込んだ。水面は黒い波紋を描いて、妖しく輝いた。

塀の上に、数匹の猫がまた現れる。三毛猫だったり、茶トラだったり、それぞれ色柄が異なる個性的な模様を持つ猫たちは、次々に池のなかに飛び込んだ。池に近づいて、真上から水の中を覗き込む。猫たちは水の中を陶酔したようにゆったりと泳ぎ回っている。そのさまはまさに錦鯉のようで、それぞれの猫の模様が鯉の特徴ある模様に重なる。だんだん、それが猫だったのか鯉だったのかわからなくなってくる。徐々に弛緩していくように意識が遠のいて、猫と鯉の境界が溶けていくように、世界じゅうの境界という境界が曖昧になっていく気がする。

とろける毒ケーキ

夢のなかでドラマを観ていた。キム・ナムギルとムン・チェウォンが主演のスパイアクションぽい作品。王女がパビリオン竣工の祝賀儀式に参列した際、大きな柱が突然折れて大惨事となる。主演の二人は国家情報院のエージェントか何かで、王女を土壇場で救出する。王女を狙っているのは誰か。裏に暗躍する組織の存在がありそれは王室と通じている。

ムン・チェウォンは正義感あふれる情に厚い戦士のような女性で、裏表なく単細胞に見えるけれど大きな悲しみを隠している。キム・ナムギルは本音の全く見えないポーカーフェイスで、瞳には深い翳りがあり、謎めいた魅力を放つ。色気がありプラックホールのような引力で惹きつける。(この人はこういう役が断然良い!目覚めた後の私的感想ですが)

二人のエージェントはこの事件により命を狙われることになる。二人に届くホールケーキ。キム・ナムギルは行きずりの女性を自宅に連れ込んで、女性が浴室にいる間にケーキの箱を開ける。変哲のない普通のケーキは突然ブクブクと発泡しはじめ、毒々しい黄色い蛍光色の液体へと蕩けていく。ケーキはある時刻になると毒薬となるように設定されていた。もしそれを口にしていたら体内で毒物に変性していたことになる。ムン・チェウォンも狙われているに違いない、どうするナムギル! というところで目が覚めてしまった。

謙遜をしない

出る杭は打たれるのをあらかじめ怖がって
大したことないふり自信のないふりをする
人に劣等感を抱かせないかと気になって
自分を小さく見せたりする
自動的にそうしたくなってしまう
嫌われたくないからね

謙遜のし過ぎは自らを歪めること
他人目線になっているということ
嫌われるならそれは嫌う方の問題だ
自分のことだけに専心する
他人がどう思おうと放っておく
他人の心はコントロールできない
相手の心を読むのなんて
はじめから不可能と分かっているのに
あくまでも自分の中で
他人の思惑をシミュレーションしているだけ
自分の中にいる他人を意識しているだけ
そんなものははじめから存在しない

青白い幽体

ベッドで横向きに眠っていると、腕の中にネルちゃん(かつての愛犬)がいるのが感じられた。布団をかぶっていたしわざわざ確かめようとはしなかったけれど、被毛のふわふわした感覚とぬくもりでたしかにここにネルちゃんが一緒にいるんだと感じた。

その直後、シルくん(かつての愛猫)が足元にひょんと乗ってきたのを感じた。いつもしていたように私の体の周りをぐるぐる歩き回る。髪の毛を踏んづけられて何度かイテテとつぶやき、ようやく私は薄く目を開ける。シルくんの体は青白く透き通っていて、幽体なんだということがすぐにわかった。手をかざしたら青く微発光する幽体の中をすり抜けるはず。シルくんはやがて私の背中に寄り添うように横になり、背中から懐かしいぬくもりを確かに感じた。私は安心してまた眠りに落ちた。

私の心の調子がまた悪くなったので、二匹はマミー大丈夫だよ、いつでもそばにいるよと励ましに来てくれたのだと思った。

良くしようとしない

やはり症状が再燃して、レクサプロ服薬を再開することになった。早く薬から離れたい、病院通いから開放されたいという気持ちが焦りを生んでいたかもしれない。はやくはやくと欲張りすぎて、断薬を早くしすぎたのかも。
未来に希望を持って今を生きる、ということを頑張りすぎていた。頓服のアルプラゾラムをとりあえず飲んでみると、力が抜けて薬効以上に心が楽になって自分でびっくりした。先のことを思い描かなくていい、今は身体の状態を良くすることだけに専念すればいいから、将来のことを意識から追い出すことができた。希望を持って生きるとか、良い人生にしようとか、それだって十分に精神の負担なんだってことだ。それも未来に囚われているということだ。

未来を心配するのはもちろん、未来を良くしようとすることも駄目だってことだ。良くしようとしてるつもりはなかった。むしろ今を生きて、今わくわくすることにとにかく邁進しているつもりだった。そうすべきでそれでいいんだと思っていた。

そういえばあまり夢を見なくなっていた。正確には覚えていないということなのだろうけど。それは現実に足がついているからで、むしろいい傾向なのかとさえ思っていた。けれど、余裕がなくなっていたということなのかもしれない。
こんなに「良い」方向へと傾き過ぎていたのに気づかなかった。急に梯子が外されて落っこちたような気分だけど、なのになぜかすごく肩の荷が楽になって驚くしかないという感じ。