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藍色に沈む街を逃げ出す 

外国、多分ロンドンにいて、私は列車に乗っている。地下鉄のようだけれど周りを見ると様々な小売店が線路沿いに並んでいて、その明かりが眩しい。西の方からひたすらに真っ直ぐに続く、全くカーブのない線路の上を、列車は都市の中心部に向けて滑り続けている。
早く帰りたい、一刻も早くこんなところから逃げかえりたいと私は焦っている。

多分空港に向かおうとしているのだ。駅で乗り換えるために降りるが、街が変わっているのか元々知らなかったのか、脳内にあった大まかな地図イメージと何かが少しずつ異なっている。方向感覚さえ失い途方に暮れる。無力感と恐怖。


その都市のイメージはいつも深い藍色の闇に沈んでいる。南側には海があるはず。海辺の記憶も日中であるのにくすんだ青のヴェールがかかっていて、寒々としているが、街全体が絵画の中にあるかのように現実感が希薄であり、それが不自然であるという認識自体も希薄になっている。
そのイメージは、今私のいるこの都市と全く重ならない。(実際のロンドンとも重ならない)
なにか大きな間違いを犯しているのかもしれないと更に不安が膨らんでいく。


列車に乗り込む以前、空港へ向かうために荷物をまとめていた場面。
古い友達のMちゃんがいて、一緒に支度をしようとする。急がないと間に合わないのに荷物がたくさんあって、取り急ぎ詰められるものと、もう諦めるしかないものを選り分ける。絶対に諦められないものもある。猫を連れていかなければ。血相を変えて猫を探すと、猫はその不穏な空気を察知して、するりと身を隠してしまう。どうしよう!と頭を抱える。

そういえば、猫にずっとご飯をあげていなかったような気がする。大切な猫のことを忘れているなんて、私はどうしてしまったのだろう? いつからこんなおかしなことになっていたのだろう。
猫は寂しそうな、面倒臭そうな目で、遠くからこちらを見ていた。