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嫉妬と銀色の鱗

昔、数回だけ話したことのある知人Hが、動画を配信するチャンネルを始めたと聞いて、見てみようと思い立った。
動画は途中から再生され、いきなりHの後ろ姿が映っていた。後ろ向きで何かを説明している。
タイトなジーンズと、白いクロップド丈のセーターとの間に、腰のあたりの肌が露出していた。その肌には、皮膚をルーペで拡大して見た時のように、細かな三角形の肌理が並んでいるのがはっきりと見え、それが魚の鱗のように銀色にギラギラと光っていた。


振り返ったHは、昔とはずいぶん印象が変わっていた。以前はショートカットで少年のような中性的な人だったけれど、画面の中の彼女は華やかな女性らしい雰囲気に変貌していた。前髪を薄く下ろし、鎖骨辺りまでのセミロングの髪を外巻きにカールさせていた。シルバーっぽいラメのアイシャドーが輝き、リップもグロスでつやつやの光沢感を出していた。鼻筋と頬の高い位置にハイライトを入れているようで、顔が立体的に見える。とにかく、何から何までつやつやキラキラのメイクだった。
そしてメイク以上に、彼女の溌剌とした印象は、非常に輝いて見えた。


彼女の変貌ぶりに比べ、自分の様を思い返すと、惨めな気持ちになった。同じ時間を過ごしてきたはずなのに、私は自堕落に時を過ごし、自分を磨く努力を怠ってきた気がした。
自責の念と不安がみるみるうちに膨らんだ。風船のように限界まで膨らんで、小さく破裂した。いつもその破裂音は小さい。しかしその音を聞いた後には、なにか別のものを身体のなかに詰め込まずにはいられなくなるのだった。
私は冷蔵庫へ向かい、何かを食べようとそのドアを開けた。中は白く、棚が3段ほどあり、ライトがついていた。まさに冷蔵庫そのものなのだけれど、中には靴下や、タオルや、そんな類のものが入っていた。


気づくと、冷蔵庫のドアが外れていて閉まらない。このままでは冷気が外へ逃げてしまう。蝶番をいじっていると、ずれていた何かがカチッともとに戻る感覚があった。ドアを閉じてみると、きちんと閉まるようになっていた。今度こそ食べるものを求めて、もう一度ドアを開けた。
すると、中はクローゼットに変わっていた。がら空きのクローゼットに、ブラウスかカーディガンのような薄手の衣類が二枚ほど、ひらひらと揺れているだけだった。