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エアコンの中の小鳥

朝起きると、リビングのエアコンが作動したままだった。おかしいなと思ってリモコンを探し、スイッチを切るけれど反応がない。リモコンの表示面が誤作動して数字の8が並んでいる。部屋の片隅を見上げると、エアコンのカバーが外れ、片側が引っかかって斜めにぶら下がっていた。中のフィルターも外れて床に落ちていた。緑色の作動中を示す小さな光が異彩を放つ。

何が起こったのか把握できずにいると、どこからか飼い猫のシルくんがやってきて、エアコンに向けて威嚇を始めた。カーテンレールの上に飛び乗り、エアコンに向けて激しく猫パンチを繰り出した。

エアコンの中から小さな悲鳴が聞こえる。ぶら下がった蓋を外すと、中にピンポン玉ほどの小さい子鳥が2羽、くちばしを必死に開いて助けを求めていた。ピーピーという音でしかないはずなのに、私の意識にはそれが、母を呼ぴ、助けを求める、明らかな「言語」として聞こえた。全身がソリッドな黄色の小鳥と黄緑色の小鳥。蛍光ペンの色みたいに、暗がりに震えていた。

シルくんがまた威嚇をするので、抱き上げて廊下に出した。今回はお前が悪いぞ、小鳥さんをいじめちゃだめでしょ。シルくんは不服そうに藻掻いた。

エアコンの内部から親鳥が姿を現した。室外機から入り込んだのか。親鳥は2羽の小鳥を救出しようとしているように見える。私は慌てて窓をガラッと開け、ここから外へ逃げな、と話しかけた。

その瞬間、親鳥は大きく羽を広げ、凝縮された羽音が破裂するように響いた。母鳥の広げた羽から、抜け落ちたいくつかの羽毛が舞ったように見えた。けれどそれは羽根ではなく、飛び立った小さな2羽の小鳥だった。母親を追って、窓の外へと飛び去っていく。ふんわりと舞うように、見えざる手で大切に守られているかのように。後光が差し、中世の宗教画のような一瞬。

庭の茂みから、同じような黄色と黄緑色の小鳥が数羽、シンクロして飛び立った。エアコンにいた小鳥より一回り大きい、兄弟のように見えた。一瞬、兄弟鳥たちと目が合った気がした。彼らの目はアーモンドのような形で、深緑色の美しい隕石が嵌め込まれたように、妖しく輝いた。鳥たちは、ブルーグレイの夜明けに溶けて消えた。元気でね。見送った私の声は濡れて滲んでいた。

目覚めると、窓の外に、鳥のさえずりが賑やかに響いていた。