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猫になりたい

長く駐車場だった隣の空き地に昨年新築のお家が建ち、新しい方が引っ越してきた。表札のところに猫の飛び出しに注意というステッカーがあったので、猫を飼っているんだなと思っていたら、以前一度だけ、うちの庭から見える北側の小窓に猫がちょこんと座って外を眺めているのを見た。

先日の朝私が洗濯物を干していたら、ニャーと大きな声がして、見ると以前と同じように小窓に猫がちょこんと座っていた。お鼻の周りに黒っぽい特徴的な模様がある。私があらっ!と言うと、またニャーと鳴く。
昔シルくんにしていたように、にゃーと呼びかけた。猫ちゃんもニャーとお返事してくれる。洗濯物を干している間、ニャ、にゃ、ニャー、にゃー、と何十回も会話した。時々人間語も織り交ぜ、お窓から下りてこないで偉いねぇ、ニャー、お名前は何ていうの? ニャー。
やがて飼い主さんに呼ばれたのか、すっと姿を消してしまった。どこかお上品な、お姫様のような猫ちゃんだった。

私は人間語より猫語のほうが上手く操れるみたい。会話を繰り返すうち、随分昔から知っている子のような気がしてきた。心が確かに通い合ったような気がする。
否が応でもシルくんを思い出さずにいられない。シルくんは、彼の鳴いた声と同じトーンで鳴く真似をしていたら、向こうも私の真似をしているみたいに同じトーンで鳴いてくれるようになった。そうやって互いにみゃーみゃーと鳴き合っているのは傍から見ると滑稽だったろうけど、何にも増して私の癒やしの時間だったかもしれない。何度やっても飽きることなく、じんわりとした幸せに充たされた。シルくんも同じくらいその時間を愛していてくれたのならいいのだけれど。
そうやって無心に楽しんでいる時はちゃんと私の真似をして鳴いてくれるのに、私が鳴かせてやろうと意図してわざと鳴き真似をすると、プイッと横を向いて「その手には引っかかりませんよ。お粗末ですね」という顔をして澄ましていた。

猫との交流。ああ幸せ。接してないと「ねこ禁断症状」が起こる。自分が猫みたいになってスリスリしたりふみふみしたりしてしまう末期症状。
猫のケンカが大好物。どこかで猫の唸り声が聞こえると、どこで一戦やらかしているのか探しに行く。うちの辺りは奥まっているし住民と宅配の車くらいしか通らないので、猫を放し飼いにしているお宅も多い。うちの庭でも出会い頭に一戦交えることがあって、昔は弱っちかった近所のタローちゃんが他の猫を追い立てて全力疾走していくのを見ては、勝手に母猫のような気持ちになって、今やすっかり貫禄あるおじさん猫になったのね…としみじみ独り言を呟いたり。
来世は猫になって、日向ぼっこしながら眠りたい。多分ケンカは弱い。

後日、隣の姫ちゃんが脱走したのか、うちの庭にいるのを発見。うちの家の周りを興味深げに探検して歩く。私もあとを追い回して、何度かナデナデさせてもらった。