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土曜日に塀を立てる

女優のHと私は、二人で歓談していた。たわいもない話ばかりだけれど、Hは親しみやすく、驕ったところの全くない人だったので、好感が持てた。彼女にとって日本語は外国語であるのに、それを気づかせないほど流暢に話した。いつの間にそれほど上手に話せるようになったのだろう、外国語習得のコツがあるならこっそり教えてほしいと思い、後でそれとなく聞いてみようと考えていた。

話題は、彼女の母国の習慣に関することに及んだ。家を建てるとき、塀を作るのは土曜日にするのが良いという、古くからの言い伝えのようなものがあると言う。「土」の日に立てれば、土のエネルギーが満ちて、その塀は大地の延長となり、外敵から家を守る、とても頑丈なものになるというのだ。
「それじゃ、火曜日に立てたら大変だ。火事になっちゃう。水曜日だったら、水害に遭う。」
「そうそう、そういうことになるね。」彼女は屈託なく笑っていた。


そのとき、大きな地震が起きた。かなり大きな横揺れで、フライパンの上で揺すられているような感じだった。揺れは数分続き、次第に高まった後、次第に引いていった。綺麗に整ったグラフの曲線のように、秩序が感じられる揺れだった。
私は揺れがおさまるのをじっと待ち、その後で家の外に出た。見事に、塀が横倒しになっていた。

土曜日に立てると良いと言うから、そのとおりにしたのに、こんなにもあっさりと倒れてしまうなんて。所詮、あの話は迷信だったんだ。そんな話を聞かせた彼女に対する苛立ちが2割、鵜呑みにした自分に対する苛立ちが8割。完全に勝負は決していた。



この夜、この夢を見ていた時に震度3の地震があった。塀の話が、地震の発生によって捻じ曲げられていったのか、それとも地震を感知してから、塀に関する夢をいちから見始めたのか。夢はごく短時間に見ていると言うけれど、だとしたら後者なのか。
実際に昨年の台風で自宅の塀が倒れ、再建工事が終わったばかり。