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背徳の香り

こんな映画を観た。
フランス人ハーフの青年が、海辺の街を訪れるところから物語は始まる。彼の父はフランス人、母は日本人で、母は若くして彼の地で亡くなった。青年は二十歳くらい、幼少期を除けば初めての訪日だった。日本には、母の姉に当たる伯母と祖父母がいて、彼らに会いに来たのだった。
青年は、伯母と対面するやいなや、電撃的な恋に落ちる。


舞台は昭和初期くらいか、伯母はキリッとした和服姿で、知的かつ妖艶な人だった。伯母には夫がいたが関係は最悪で、一人娘のために、かろうじて仮面夫婦を演じていた。青年の若く純粋な心は制御不能で、一途な想いを駆け引きなしに、直球で投げつけてくる。青年の艶を湛えた細い金髪が、鋭利なまなざしの上に落ちかかる様は、この世のものと思えないほど美しかった。
伯母は、理性と衝動の間で身悶える。苦悶の末に理性が勝利し、伯母は青年の想いを突っぱねることに何とか成功する。畳の敷かれた寝室で、伯母は青年をきっぱりと拒絶した。


そこからは、青年の復讐物語だ。穢れを知らない一途な想いをへし折られた彼は、愛を憎しみへと変換することでなんとか生きようとする。
彼の復讐の矛先は、伯母の一人娘へと向かう。まだ世間を知らない若い娘は、従兄の手によって簡単に籠絡された。娘は青年に恋をし、青年は彼女を落とすことに苦もなく成功した。
伯母にこの事実を知らしめること、そして娘をこれ以上なく冷酷に捨て去ること、これで彼の復讐は完了する。その予感の中で、彼はひとり、笑いながら涙を流した。


嵐が丘』のヒースクリフを彷彿とさせるような復讐劇。谷崎潤一郎的な、やや倒錯した情熱、背徳の香り。想いの熱量が現実離れしていて、その魂が純粋すぎて、何もかもが強すぎて、クラクラと目眩がした。
この世界から目を醒ましたら、現実の日々があまりにも無味乾燥で、砂を噛むように感じてしまうような気がした。