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魂の鎮痛剤

モルダヴァイトというのは隕石の一種で、モルダウ地方から産出されることでその名がついたとか。モスグリーン系の色調を持つ透明なガラス質の石。これに初めて触れた時、自分でも不思議で仕方ないくらいに「懐かしい」と感じた。

魂の繋がりを持つと思われる人と出会ったときに、瞳の中に深い奥行きが見えて——鏡の中に映る鏡、その中に映る鏡という永遠の連鎖のような——その光をずっと以前から知っているような気がすることが何度かあったけれど、その時の感覚にとても似ている。ずっとずっと気が遠くなるような昔から、遥かな時空を超えて、その石の波長を知っていたことを思い出す。そんな感じだ。それは滅多に起こることではなく、この石以外では感じたことがない。

物をたくさん集めると、その管理に気を取られて物自体と向き合うことが難しくなる。極端にものぐさなため出来るだけ物を持ちたくない。大切だと思えるものなら尚更、数を増やしたくない。この石に関しても同じで、小さな原石をひとつ、指輪に加工されたものをひとつ、ドロップ型に研磨されたやや大きめ(といっても親指大程度)のものをひとつ、その3つしか持っていない。

昔代官山にあったKCジョーンズという石屋さんに行った時、店員さんが「モルダヴァイトは小さいもののほうがピリピリ来る」と話してくれた。あまりに刺激が強く頭が痛くなってしまうことがあるそうだ。確かに、研磨された大きめのものより、小さい原石のほうがピリピリ痺れるような触感を強く感じる。私には頭が痛くなるということは全く無く、そのピリピリ来る感じはどこまでも心地よく、癒やしさえ感じられるものだった。人によってはこれが頭痛のもととなるのが信じられないくらいだ。私は、ラピスラズリなどで頭痛を起こすことがある。第三の目、松果体を刺激する石だから納得だと思う。
モルダヴァイトは、プレアデスに起源を持つ魂にとって故郷のような波動に感じられるとか。本当かどうかは知らないけれど、だとしたら私は間違いなくプレアデス出身だ。

私にとってモルダヴァイトは、この地上にうまく適応できない自らの魂を癒やしてくれるもの。宇宙の波動をもたらしてくれて、一時この世に在ることの痛みを忘れさせてくれるもの。そんなモルヒネみたいな波動。だからこそ、いつもいつもそれに触れて、中毒してしまうことが恐ろしかった。ものすごく周波数の高い細やかな波動に魅入られて、魂が地上を離れてどこまでも上昇していってしまう感じ。躰と魂がいつのまにか引き離されて、上下にビヨーンと伸びてしまったような感覚。その中にずっと遊んでいたいけれど、それではイメージの中で遊んでいることと同じで、何も現実に出来ない。それは痛いほどわかっていても、なかなか地上に帰ってこられない。これはまさに麻薬のようなものだと思った。しばらくこの石を封印することにした。

久しぶりに出してきて、このダークなグリーンに心を吸い込ませると、やはり痺れるような魅力を感じる。
どうしようもなく惹かれてしまう人に対して感じることと、この石に対しての感覚とも、とても似ているということに気づいた。中毒するほど引き付けられるのに、怖くなって距離を置いてしまう。それでもずっと同じ引力で惹かれ続けていて、どれほど時が経っても変化がない。その力と同化されてしまって、惹かれるということがどういうことかも、もはやよく解らないほどに。