誰かに話したことが自分の意図したとおりに伝わらない
そういう経験がとても多かった
単に話し言葉が下手なのか
相手に合わせて語り方を調節することが本当に苦手だからか
完全に相手の都合のいいように曲解されることもある
それでいて「わかる〜!」と同意されると腹が立つ
大筋は汲み取ってもらえても細やかな心の襞は読み取ってはもらえない
それが当然のことと思って諦めてきた
稀に思ったことがありのまま伝わったように感じられる時
逆に当惑して震えるほどに怖くなる
わかり合えた歓びを味わってしまったあとで
相手との相違点が目に入ると通常以上に深く落ち込む
一度高揚したあと墜落するのが怖いから
わかり合えないことを前提としておきたい
わかり合えたということが幻想だったと知らしめられるのが怖いから
はじめから心に重い鎧を着て
ガシャガシャと不快な音を立てながらぎこちなく歩き回る
早く一人になって鎧を脱いで楽になりたい
それだけを願いに外へ出る
鎧の着方がもう少しうまくなりたい
もっと素材を軽量化してもっと楽に着脱してみたい
他の人はなぜあんなに簡単にできるのか
未だに判らなくて苦しむ
外出着に着替える
ただそれだけのことがものすごく心に重くのしかかり
大変なエネルギーを要するのは
それが私にとっては鎧だから
鎧無しで出掛けるのは裸の赤子を街なかに放置するようなもの
心は生まれたてのまま何一つ成長していない
成長しなければならない意味がわからない