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顔のない人間

『絶対の愛』 2006年のキム・ギドク監督作品を観た。
冒頭は、整形がもてはやされる外見至上主義に警鐘を鳴らすような内容なのかと思ったけれど、流石に数段奥が深かった。


顔を変え、名前を変えたら、元の人間性をよく知っていたとしても、その人がその人だと確信することができるだろうか?
その人を愛していたとして、顔と名前が変わっていたら、その人を間違いなく見つけ出すことができるだろうか?
共通の思い出があったとして、見ず知らずの顔を持つ相手から、その思い出を引き出すことができるだろうか?
愛していた人は誰だったのか。そして自分自身とは誰だったのか。顔を変えてしまっただけで、何もかもがわからなくなってしまう。何という迷宮!! 最高に衝撃的でゾクゾクした。


砂漠に埋もれた砂のひと粒が、砂漠に消えた砂のひと粒を探す。そして、すべての砂粒は、同じ顔をしているのだ。
絶対の愛とは、いったい何なのだろうか。そもそも他者への愛というものは存在し得るのだろうか。そんな疑問をこの作品は問いかけていると思えた。