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巨大な弓のような虹

南の島のリゾートらしき場所。
高層階にある、室内の温水のプール、あるいはお風呂なのかわからないが、私はそのお湯に浸かりながら窓の外を見ていた。一面のガラス窓の外には、遥か見渡す限りのブルーラグーン。その手前には様々な形のプールや遊園地のアトラクションのようなものを見下ろすことが出来た。鮮やかな青一色の世界は、ラッセンの絵画のよう。


気づくとその絵画に、虹がじわりと浮かび上がるように描き足された。水平線と、遠くに浮かぶ島とに橋を架けるように。
その直後、もうひとつの虹が、縦の方向に架けられた。天と地に架ける橋のように。巨大な弓のように。最初の虹よりも、二回りほど大きく太い虹だった。虹の上部は眩しすぎて見ることは出来ないが、天穹を突き刺して、優に宇宙へと到達していたはずだ。
二つの虹が垂直に交わった部分は、十四色の光が滲んで溶け合い、得も言われぬ美しさだった。それは白でもなく金でもなく、原始に初めて宇宙に誕生した光があるなら、こんな色をしているだろうと思われる、名付けることのできない色彩だった。


パートナーらしき人が私を呼びに来て、早くあがるようにと促したけれど、私はその場を動きたくなかった。窓の外の世界、青の絵画の世界に自らが入っていったら、何かが壊れてしまうような、何かを見失ってしまうような気がした。その完全なる世界が幻だったのだと気づき、幻滅したくなかったのかもしれない。
パートナーはそれを察したのか、私が安心できるような言葉を話しかけた。その言葉が何だったか思い出すことができない。私は心が一気にほどけ、安心したのと同時に、涙が溢れてくるのを感じたような気がする。その辺りの記憶もなぜか曖昧。